エピローグ

 ロッキングチェアに揺られて、まだ、ゆっくりとしたときの畔に身を委ねていた。


 喉の渇きを癒すだけがお紅茶ではないだろう。

 疲れているときにか?

 いや、あまりにも疲労困憊していると、最低限の生活しかできないもの。

 文化的活動、趣味、創作……。

 そう言ったものには、自分への罪悪感が残る。

 この残り香は、お紅茶の香と似ていると思った。


 私が趣味嗜好に規制をした所で、子ども達が元気になったり母が目を開く訳ではない。

 お守りにもならない。

 でも、無神論者の私でさえ祈りを知ることとなった。


 お紅茶は、まだまだ出会いがあるだろう。


 この旅は一度故郷へ帰り、周囲の幸せに涙落つるとき、再びチケットをとれたならと思う。


 私は涙の行方を知られたくないから、船の甲板で遠く海によって繋がれた国々に向かいたい。

 数多ある国境なんて、地面にあるのか。

 お紅茶は、貧富の差、文化的差違を生む。


 けれども、愛する人といただくのが、この褐色に対する礼だろう。


「あなたとのティータイムを楽しみにしています」



  お紅茶世界紀行 完

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お紅茶世界紀行 いすみ 静江 @uhi_cna

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