ジャイアント馬場

むせる様な南国の植物たちの草いきれ。

高い温度。高い湿度。

そのため、館内に入るなり、ねっちりと肌に張り付くシャツ。

所狭しと繁茂する植物の蔦。

そちこちから聞こえる鳥たちの甲高い鳴き声。

目の前に降り立つ見たこともない原色の鳥。


全面ガラス張りの、かつてここにあった熱帯鳥温室に足を踏み入れた時の気持ちの高鳴りを私に語って聞かせた後、父はため息を一つついた。


「ショックじゃないってことは決してないな」

「うん」

「ずっとここにあるものだと思ってた」

「そうだね」

「ジャイアント馬場が亡くなった時みたいだ」

「え?」

「お父さん、あの人、絶対死なないと思い込んでたんだよね」

「ごめん。その人、知らない」

「プロレスラー。なんかその位不動の、凄い人だった」


父は、腕を組んで温室があったあたりを眺めていた。


「お父さんが見たかもしれないたまごの木も、わからなくなっちゃったね。あったのか、なかったのか」

「ああ、そうか。淳、スマホで調べたら?実在の植物かどうかぐらいわかる」

「そういうのやだ。やになった」


なんでもすぐにさ、わかってしまった方がいいわけではないよ。


「それよか、さっきから淳に聞いてるんだけど。どうよ?今日の学校見学。感想は?」

「ああ。それね」




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