第12話 鬼姉様方の評価

「どうだった?」

 三田みた寮監長様の声だった。

 

「いや、なかなかでしたよ。受け止めた回数が258回・・・わたしらでもこれだけの回数、警棒をブン回すのは骨ですよ。しかも、後半の方が打込みが強くなっていて」

 

 完全にバテて体育座りで休憩していたわたしを、軽く見下ろしながら、結愛ゆあ鬼姉様は、意外なことにわたしの制圧警棒振るいを褒めてくださった。褒めて伸ばすタイプなのだろうか?

 

「自分が受け止めた回数は262回」

模擬警棒をちらりと見ながら、心春こはる鬼姉様が押仰おっしゃった。先程、結愛ゆあ鬼姉様の方も模擬警棒をチラ見していた気がするから、模擬警棒には受け止めカウント機能でもあるのだろう。


「後半の方の打込みが強くなったのは、キラキラ・ボディのおかげですかね」

と、続けて、心春こはる鬼姉様。


 やはり、わたしの身体は未だにきらめいているらしい。わたしの身体に入り込んでいるレムちゃんたちの効果だろう・・・ルカサブロウ君がポーランドのSF作家にちなんでつけたとかいうナノマシンのレムたちを、わたしはちゃん付けで呼ぶことにしている・・・だって、自分の身体にどんどん入り込んできている存在も、ちゃん付けにすれば、すこし可愛い感じがするじゃない?


 冷静になって考えてみるに、たしかに、元の体重44㎏、身長は146cmに過ぎないわたしが、両腕で12㎏もある制圧警棒を長時間振り回すことができたのだ。記憶の中で10㎏の米袋の重さを思い出し、それを何百回も振り回すことを想像して、今のわたしが、レムちゃんナノマシンのおかげで、既に規格外となりつつあることを悟った。

 

 今朝、保健室で香織かおりさんに再度の測定してもらったところ、わたしの体重は44.5㎏となっていた。わたしの身体がこの2日で取り込んだレムちゃんの総計は、1.5㎏ということになる。

 ナノマシンを取り込み続ける限り身体はきらめき続ける、とのことだった。はたしてきらめきはいつまで続くことやら。


 

 鬼姉様方は、話し続けていた。 

「・・・こりゃぁ、なんか名前つけてやらないとなぁ。キラキラ光るお星さま・・・」

「小さい子にはだいたいプリティとかつけるものだからな。プリキラでいいんじゃないか?」

「いいじゃないか・・・よし、凪沙野穂香なぎさのほのかよ、合宿での呼称は、プリキラだ。個体名は、プリ・ほのか、か?」

「いや、常時キラキラしてるわけだから、キラ☆ホノカンだろう」

「ん?」

「ンつけた方が語呂がいいだろう」


 結果、わたしは、キラ☆ホノカンという名前付ネームドとなったらしい。


 ツカツカと三田みた寮監長様がわたしの方に歩いてきて、

「らしいぞ。キラキラ・プリキラ様。この調子で励め」

押仰おっしゃると、

「よし、あちらでシャワーを浴びてこい」

と続けられた。

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