第8話 わたしのバースデー・バスタブ

「ほのか、何キラキラしてるのよぅ」

 二期上で来月から高等科に進学なさる。如月優花きさらぎゆうか先輩が真っ先に声をかけてこられた。同期の中では優花ゆうか先輩が一番肝が座っていると仲間ナカマ先輩からお聞きしたことがあるが、寮監長様から2メートルほどの距離での華やいだ声をあげたことからすると、当たっているのだろう。



「本当、お肌ツヤツヤじゃない」

「髪の毛なんてもはや、虹色だし」

 寮監長様がもう3歩進まれたところで、仲間ナカマ先輩と同期の摘希つむぎが歓声を上げた。


 何、今日の主役が端から目立っているのよ、的に皆さんに囲まれながら、わたしは直に室で予約済の浴室に連行された。


浴室では

「うわぁ、ほんとにすごい」「こっちの手も~」「足もなんかすべすべだし~」

 相互連帯責任ジョイントライアブルな隣室の先輩含め、先輩方に、両手両足を洗っていただいてから、「「「ハッピー・バースデー!!」」」と、ミカ校で一番遅いわたしの13歳のひな祭りバースデーをもみくしゃにお祝いしていただいた。


 ☆


 その後は、室のまとめ役にして、友利会長と同期の生徒会書紀である友加里ゆかり先輩に髪を洗っていただいた。

 大先輩に丁寧に髪を洗っていただいていることに恐縮しているわたしに、先輩は、

「実は、今日の穂香ほのかに起きることのあらましを菜生なおから予め聞いていてな。たぶん、見た目からしてすごいことになっていると聞いて、皆で楽しみにまっていたのだ」

と落ち着いた口調でおっしゃられた。


「寮監長が直々に穂香ほのかを迎えに向かわれたのもその流れだぞ」

わたしの髪をシャワーで流しながら、友加里ゆかり先輩は付け加えられた。


 夜魔王やまおうのルカサブロウ君も一目置いた寮監長様の鬼の形相は、寮監長様なりの今宵の配慮ということなのだろうか?・・・室で、一番風呂の貸し切りをできているのも、寮監長様のおはからいなのだろう・・・と、いつもクールフェイスな寮監長様に心の中で、先程のハッピー・バースディに改めて感謝していると、

「明日の夕方まではバースデーを心ゆくまで楽しんでおけと、寮監長は押仰おっしゃっていたぞ。十分に鋭気を養って、晩からの一ヶ月に備えておけ、とのことだ」

との友加里ゆかり先輩のお声が。


 はい、明日の晩からは、寮監長様と鬼になるための一月の合宿を行うのでした・・・養える鋭気は養っておきます。。。


 リンスを終え、丁寧に髪を流してくださった友加里ゆかり先輩は、わたしを背中からギュッと抱きしめてくださり、

菜生なおが言うにはは今宵のパーティで開示される情報は全て室で共有していい情報だそうだ。ミーシャ指導官も公認なされているとのことで、穂香ほのかは深く考えなくて良いからな。お前はこれからの特務に集中すると良い」

とおっしゃった。


 そのお言葉に、そうか、良くわからないままに唐突に始まったわたしのナノマシン注入は、ミカ校の特務に当たるのだなと覚悟しつつ、先輩方と摘希つむぎの優しさに温かい気持ちになりながら、皆さんと一緒に浴室を出た。

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