第3話 コナン系美少年 トモナガ・ルカ・サブロウ

「宮古島市における昨今の物資欠乏については、ジミカの編集に携わっている凪沙野なぎさの君も、良く理解していることと思う」

嘉納一佐が、ゆっくりと話しはじめられた。いきなり、わたしの姓が登場したことに恐縮する。


「エムデシリの諜報担当隊インテリジェンスの協力の下、宮古島駐屯地としても、市民の皆さんのための生活物資を外地からの調達を継続して試みているところではあるが、未だ道半ばである」


「さて、友利君からも簡単な説明があったところと思うが、これまでの調査で外地は中世の日本と思しき地であることが判明している。我々が知る歴史とは明らかに異なるが、外地には武家政権が成立しており、日本語でのコミュニケーションがある程度成立する。そこで、外地の人々と交易をする計画を立てているところである」


 わたし一人のために駐屯地司令の嘉納一佐がわざわざ説明してくださることに大いに恐縮しつつ、話を拝聴する。外地から生活必需品が手に入れられるようになるならば、何よりである。

 

「多量の物資交易をするためは、もちろん、琉球準州軍所属の揚陸艦のぞみに活躍していただきたいところではある。しかし、現在、のぞみは、宮古島市と共に琵琶湖に閉じ込められた状態にある」


 ジミカの取材で訪れた、伊良部島と宮古島をつなぐ陸橋のそばの港に入港したままのあたごの姿が思い浮かぶ。


「我々は、琵琶湖の外、日本海にのぞみを派遣したいと考えている」

ミーシャ指導官が横から補われた。

わたしは思わず、ミーシャ指導官のお顔を見た。

(そんなことが・・・?)


嘉納一佐はわたしの横顔に向けて、続けられる。

「そんなことが可能なのか、と思うことだろう。私も先月までは、のぞみを琵琶湖の外に向かわせるなど不可能だと考えていた。けれども、琵琶湖南への外地調査で、我々は可能性を手に入れた」


「我々のそもそもの調査目的のひとつは、島を脅かし続ける不明体アンノウンを動かす原理を探ることだった。何しろ、身長10メートルを超える個体もいる不明体アンノウンたちは、ひとまず破壊された後は土塊に戻る土人形に過ぎないのだからな。呪術的なものであれ我々の知らない物理法則に基づくものであれ、我々は不明体アンノウンを可能ならしめる原理を探りたいと考えている」


 もちろん、不明体アンノウンが何者か知ることが重要なことは分かる。けれども、揚陸艦のぞみの日本海展開との関係が分からない。わたしが和希かずき先輩のアシスタントとなることの関係はなおさら分からない。


「湖南市近隣を収めている勢力は、湖南タンと名乗っている」


(こなんたん?)

 実直な顔のまま、嘉納一佐のお口から、斜め上のタームが飛び出した。


「我々は、先月の調査行において湖南タンと相互理解を果たすことができている。加えて友軍と呼ぶべき力を持つ、トモナガ・ルカ氏と協力関係を築くことができた。トモナガ・ルカ氏の助力により、畑和希はたかずき君は、土木を操作する異能を得た。調査に同行していた兵站支援の隊員たちがルカ氏の導きのもと、和希かずき君が、湖南の里山をあっと言う間に、田に次々と引水していく灌漑を目撃している。」


 わたしは真剣な表情を保ったままに、頭の中で、和希かずき先輩がショベルカーに変身し、我田引水する様が思い浮かべてしまう。


「その後、兵站支援工兵部隊とルカ氏が検討を加えた結果、和希かずき君の異能で、琵琶湖から日本海に至る運河を作ることが可能との見立てが成立した。おそらくは不明体アンノウンの動作原理とも通じるであろう和希かずき君の異能が、宮古島市の兵站確保に新たな希望をもたらしてくれている。少し長くなってしまったが、私からの話は以上だ。」


 嘉納一佐は、運河作りという壮大な話で、締めくくった・・・一生徒に過ぎないわたしが、たった一人で駐屯地司令から壮大なプランを聞かされる意味合いは全く見えない。



「さて、司令のお話と、ハダカスキーが文字通り裸体透視ができるようになった件とのつながりが見えていないことと思う」

ミーシャ指導官が話を引き継がれた。


「まぁ、そんな下らないことを当時者でもない私が長々と話しても仕方ないから、ここからは、トモナガ・ルカ君ご当人に経緯を説明してもらおうと思う」


 異世界の協力者、いきなりのご登場である!


「トモナガ・ルカ君は、外地で唯一、現代日本に関する記憶を我々と共有しててる。異世界で数千年以上の時を過ごしたお方でもある。今の見た目にはごまかされないように」


 なんと、現代日本からの転生者!・・・齢数千歳と聞いたわたしは、長命で知恵深く、そして宝塚スターのように素敵なお姿のエルフの登場を思わず期待してしまう。

 

 ☆


 ガチャリ。

 

 職員室からのドアが開いた。

 

 現れたのは、金髪で整った色白の顔を持つ、中性的な、美少年だった。いや美少女かもしれない。


 「はじめまして、トモナガ・ルカ・サブロウと申します」

と、彼がペコリと頭を下げて自己紹介ししくれたことで、わたしはルカサブロウ君が美少年であることを知った。


 見た目の年齢は、小学校1年生か2年生くらい。どこぞのコナン君と同年代に思われる。

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