第27話 霧咲邸で知るとんでもないこと!?


 放課後。

 俺と天音は霧咲さんの自宅に招かれることになった。


 外見はまさに豪邸。

 現代的なスタイリッシュなデザインで、かなり大きい。


 会社の社長の自宅ということもあり、見事なまでの豪邸だ。


 玄関に入ると、高い天井と解放感のある空間。

 普通の家ならここで靴を脱いだりするところなんだけど、あまりにも高級感がありすぎて俺と天音は立ち尽くしてしまった。


「ね……ねぇ、春彦。ここって日本よね」

「あぁ……。ホテルのエントランスホールみたいだ……」


 霧咲さんは近くにいた大人のメイドさんにカバンを渡し、スリッパに履き替えた。


「では私は着替えてきますので、ごゆっくり……」


 彼女はそう言うと、そっけなく別の部屋に行ってしまった。


 あの高飛車な性格なら、もっと自慢をしてくるかと思ったのに。

 もしかすると自宅にいる時は、あまりテンションを上げないタイプなのかな。


 とにかくここで立っていても仕方がない。

 スリッパに履き替えよう。


 すると日七瀬さんがトーンを落とした声で話し掛けてきた。


「あ……あの……。春彦様、天音さま。そのぉ……、今のうちにお話しておきたいことが……」

「どうしたの?」

「これから真実を知って、お二人は驚かれると思います。なので先に……」


 真実? 何の話だ?

 まさか、俺と霧咲さんが許嫁かもしれないって話のことか!?


 だが日七瀬さんがその話をし始めるよりも早く、玄関のドアを開いて別の人物が入ってきた。


 スマートな身のこなしに、高級スーツを着た中年男性。


 彼を見るなり、そばにいたメイドは執事、そして日七瀬さんが一斉に頭を下げた。


 そうか! この人は霧咲さんのお父さんなんだ!


 霧咲さんのお父さんは俺を見るなり、豪快に握手してくる。


「おぉ! 春彦君じゃないか! よく来てくれた! 大きくなったな!!」

「あ……、はい。どうも……」

「本当に久しぶりだ。……まぁ、そうは言っても、君がここに来たのはまだ四歳だったから覚えているはずもないか」



 あれ? 初対面と思っていたけど、俺はここに来たことがあるのか?


 戸惑う俺に、霧咲さんの父親は話を続けた。


「ご両親が長期出張で家に帰れなかった時があってね。君はここで一ヶ月ほど暮らしていたんだよ」

「そんなことが……」

「志保はあの通りの性格だからね。君とも相性がよかったらしく、寝る時もずっと一緒だったんだ」


 えぇぇぇ!! 俺と霧咲さんが寝る時も一緒だった!?

 いや、覚えてないって!

 知らないって!!


 おそるおそる天音の方を見ると、『ゴゴゴゴゴッ!!』という効果音が鳴りそうなプレッシャーを放出しながら立っていた。


「ねぇ、日七瀬ちゃん……。今の話って本当?」


 すると戦闘モードの日七瀬さんが、冷酷に答える。


「まだ私がメイドになる前の話なので初耳です。でも事実なら、春彦様は私達に償いをするべきですよね」

「本当にそうよね。何をしてもらおうかしら」


 ギリギリ聞こえる小声で物騒なことを相談するのはやめてくれよ!!

 怖いんだけど!? マジで怖いんだけどぉぉぉぉっ!?


 ――って! 今はそれどころじゃない!!

 

 今日ここに来た目的は、許嫁の真偽を確かめるためなんだ。


「あ、あの……。霧咲さんのお父さん。聞きたいことがあるのですが」

「なんだい?」

「噂で僕と霧咲志保さんが許嫁になっているという話を耳にしまして……。ウソ……ですよね?」

「ああ、それか。確かに酒の場で君の父親とそうなったらいいなという話をしたことはあるが、それはタダの雑談だ」


 なんだ……。やっぱり許嫁なんてただの噂だったんだ。

 もしかして……という気持ちも少しはあったので、事実を知った俺は安堵の息を吐いた。


「よかったね。春彦」

「ああ……」


 その時、別の部屋から上品な女性が歩いて来る。


 黒く長い髪で派手な印象はなく、メガネを掛けている。

 そして無表情でぽつりと一言。


「おまたせしました」

「あ、……えっと。どうも」


 誰だ? 霧咲さんの妹さんかな?

 顔はそっくりだけど……雰囲気が全然違う。


 でも向こうはこっちのことを知ってそうな雰囲気だ。

 俺は小さな声で日七瀬さんに訊ねる。


「えっと、この人……だれ?」

「お嬢様です」

「ええッ!」

「お嬢様は悪役令嬢系のラノベにハマった影響で高飛車キャラを演じていますが、今の地味で存在感がないお姿が本当のお嬢様です」

「そう……だったのか」


 いや、でも……。

 霧咲さんがそんなことをする人なんて、今まで微塵も見せていなかったじゃないか。


 戸惑っている俺に日七瀬さんは説明を付け加えた。


「思い出してください。数日前に春彦さまと会った時のことを」

「確か、車で横付けしていきなり現れた時だよね」


 彼女はコクリと頷く。


「あの時お嬢様は映画のセリフを使おうとして失敗してましたよね」

「そういえばそうだった。……えっ!? じゃあ、あれってつまり! 霧咲さんって……」

「はい。日常的に超重症の中二病です」

「マジか……」

「ちなみに学年トップを死守しているのもアニメキャラの影響です」

「中二病だけど執念がすごい……」


 なんか……、ここ最近で一番驚いた瞬間だ。

 そして日七瀬さんは言う。


「やっぱり驚かれましたね。これが真実です。でもこうして冷静でいられるなんて、さすが春彦様です」

「あっけに取られてるだけなんだけど……」



■――あとがき――■


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