第19話 突然現れたライバル?
期末テストまで後一週間。
俺と天音は一緒に学校から帰っていた。
「あと少しで期末テストか。この時期って落ち着かないのよね」
今一つテンションが上がらない天音をリラックスさせるように、俺は気軽に返答をした。
「まぁ、なるようになるさ」
「……春彦って昔からそうだけど、メンタルが本番特化よね」
「なにそれ?」
「普段はヘナヘナで頼りないところがあるけど、本番だけは無駄に強いって意味」
「バカにされてる?」
「褒めてるけど?」
ここで笑ってくれるなら冗談だと受け止めることができるけど、天音はドライに返事を返してくるから、本当はバカにされているんじゃないかと心配になる。
俺、そんなにヘナヘナなところなんてあるかな?
自分の行動を思い返していると、天音がゆる~く体当たりをしてくる。
「なに?」
「別に」
そして天音はクスッと笑う。
あぁ、なるほど。ここまでの一連の行動がセットで冗談だったというわけか。
なんか俺、天音の手玉に取られる時が多いよな。
そんなやり取りをしながら歩いていた時、急に黒塗りの外国車が横付けをした。
そしてドアが開く。
「フンッ。やっとライバルが現れたと思ったら、なんだかモブっぽい男ね」
上品なのにケンカ口調の声と共に車から降りたのは、うちと同じ制服を着た超美人の女子高生だった。
さらに彼女の隣には、小柄な女子高生が立っている。
まるで付き人みたいだ。
彼女は少しウェーブが掛かったミディアムヘアを軽く払い、強気の性格を示しているような鋭い瞳で俺を見た。
「こんにちは、高峰春彦。私の事は知ってるわよね?」
「知らないけど」
「安い挑発ね。そんなことで私がペースを乱すと思ったのかしら」
「いや、本当に知らないんだけど」
突然出てきて誰なんだ、この人は。
すごく綺麗な人だけど、イマイチ好感は持てないな……。
すると隣にいた天音が小声で説明をしてくれた。
「春彦……。この人、霧咲さんよ。ほら、学年トップの
「えっ? そうなのか!?」
「噂で聞いた話だけど、父親が大企業の社長を務める超エリートで、彼女はその令嬢らしいわ」
「へぇ……、そうだったのか」
俺達の学年で霧咲志保と言えば、ちょっとした伝説だった。
入学以来、常に学年トップの成績を誇る天才で、先生たちも霧咲さんには頭が上がらないと聞く。
霧咲さんは俺のことを覗き込むように観察した。
「ふぅ~ん。写真で見るよりもマシだけど、こんな人がねぇ……」
「あの……霧咲さん。俺になにかようかな?」
「あら、ごめんなさい」
少し離れた霧咲さんは、妖艶に微笑んだ。
「私は今まで圧倒的な差で学年トップを維持していたけど、中間テストの時、あなたは私を追い詰めたわ。それで興味を持ったってわけ」
「ええっと……つまりどういうことかな?」
「わからない人ね。単刀直入に言うわ。高峰晴彦。あんた、私のモノになりなさいよ」
「はぁ?」
え? 何を言ってるんだ?
私のモノになれ?
いきなり現れて、そんなことを言われても困るに決まってるだろ。
一方、霧咲さんは俺の反応が不思議らしく、首を傾ける。
「意味が通じてないのかしら? 一般的な言葉に置き換えるなら、私のカレシになりなさいってことね」
改めて丁寧に説明してくれるが、それでも唐突過ぎて意味が分からない。
俺と天音が状況についていけなくてポカーンとしていると、霧咲さんは傍にいた付き人の小柄な女子高生に声を掛ける。
「……あれ? 私のセリフ、おかしかったかしら? 映画でよく主役がヒロインに『俺のモノになっちまえよ』って言ってるからこれでいいと思ったのだけど」
「あわわ……えっと……。普通の人はその言葉を使わないので……。はうっ!」
「え? そうなの!?」
自分が恥ずかしいセリフをいてしまったことに気づいた霧咲さんは、顔を真っ赤にする。
ずっと天才だと聞いていたけど、意外と天然な人みたいだ……。
「ま……まぁ……付き合うかどうかはテストの後で話し合いましょう。負けた後なら、少しは素直になるでしょ……。じゃあ……これで……」
引きつった顔で気まずそうに車に戻る霧咲さん。
そして付き人の女子高生がペコペコと何度もお辞儀をして、同じ車の乗り込む。
こうして二人は去って行った。
「なんか、変な人に好かれちゃったね」
「うん……」
もしかして、黒板に俺の事を好きだと書いたのは霧咲さん?
いや……まさかな……。
■――あとがき――■
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