第5話 ギャラリー
大学生になった。
中学、高校と比べると関係性が浅く、授業に出るだけで、「真面目」という評価を得られ、運動する機会は少なく、たまにあっても、「最近動いてないからな〜」で簡単にごまかせる大学生という環境は自分にとって最適だった。
「文武両道。陽キャとも陰キャとも仲良しで、男子とも女子とも仲良しな俺」でいる必要はなかったが、彼女がいなかったため、そこに対しての演出は必要だった。
大学生ともなると、彼氏、彼女がいることは当たり前で、どこに旅行に行ったとか誕生日のプレゼントはなんだったとか少しお金のかかる「子供じゃない自慢」が一般的には主流だった。
中には、遊んでる自慢をする奴もいたが、当然賞賛の声ばかりではなく、陰では冷たい風が吹いていた。
「彼女がいても普通」
「遊んでいてもダメ」
そんな縛りの中、監督は「良い人」で止まるよう指示をしてきた。
「良い人」で止まることで、「女友達は多い」という0じゃない可能性を示唆し、昔取った杵柄による減点を避けることができていた。
尚且つ、その頃流行っていたドラマの影響か、「過剰な優しさの裏には影がある」と思い込む人が多く、ただの虚栄心を感動物語に変えてくれた。
そのおかげで、監督も想定外の「影のある、助けたくなる程の良い人」になることができていた。
ただ、「良い人」は自分にとって過度な演出ではなく、楽だった。
このままずっと、良い人で止まっていたかった。
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