第4話 自業自得

「自業自得」

この言葉の意味を身をもって知ったのは、高1の秋だった。


皆がそれぞれ、クラスにも高校生活にも慣れてきた頃、俺は恋をした。


同じクラスの同じ様なタイプの子だった。

その子は、頭が良くダンス部に入っていた。


地味でもなく、派手過ぎるわけでもない。

自分と同じ様に、敢えてバランスを取っているのかは分からなかったが、少なくとも、わざとらしさを感じる事はなかった。


彼女も同類だと思ってくれていたのか、春からずっと仲は良かった。

それが、秋になって周りも慣れてきたからか、いじられるようになっていた。


2人で喋っていると、

「おい、ここでイチャつくな〜」

「見せつけんなや!」

なんて、やじられたり、

複数人でいても、わざとらしく、ニヤニヤしながら

「あ、ごめん、先行くわ!」

なんて言われ、2人きりにさせられたりもした。



そんな事が続いたある日、彼女からメールが来た。


『なんか最近、私達めっちゃいじられるくない?』

『だよな!笑マジでウザいよな〜笑』


『私達の噂知っとる?なんか、皆の中では付き合っとることになっとるらしいよ?笑』

『そうなん?笑そんなじゃないのにな!笑』




『私は、本当でもいいよ?』

『ごめん。』




同じだった。

想いも返信の速さも。


手が勝手に動いていた。

たわいもない会話と同じ速さで、初恋は終わった。


いや、終わらせた。

終わらされた。



俺は、自分の意思で、自分を演出している、できていると思っていた。


でも、間違っていた。

俺は、演出に支配されていた。


無意識が、初恋相手と付き合う事よりも、イメージを優先した。

それに、逆らえなかった。


「恋に溺れず、女子を振り回す、ちょっとチャラい奴」


演出は、恋人よりもこれを欲した。




その後も、何人かと噂になることはあったが、自分の意思を貫くことはできなかった。


支配されたままだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る