第2話
……パタンッ..
僕はさっきまで読んでいた本を閉じる。読んでいたのはアデム様の手記だ。
なぜこんな、読むのもかったるいような本を読んでいるのかというと、学園の神人史学の教授に出されたレポートを消化するためだ。
「はぁ....」
思わずため息が漏れてしまった、やはり長時間の読書は自分には合わないらしい。
「疲れてそーなため息だねー.....手伝ったあげよっか?」
「ッ⁈.......なんだエレンか、急に話しかけてくんなよ....」
後ろから急に声をかけられたため変な声が出そうになったが、かろうじて堪えて振り返るとそこには、人懐っこい微笑みを携えたエレインの姿があった。
愛称として僕はエレンと呼んでいるが、学園の人気者なのでエレインと呼んでいる人を逆に見た事がない。
「うっせ.....邪魔だよ、どっか行っててくれ」
「へぇーそんなこと言っていいんだ? 前回みたいに提出遅れて大目玉食らっても知らないよー?」
「いいんだよ僕は僕のペースでやってんだから、まだ3日もあるし...余裕だろ」
「またそんなこと言って....でもマジメだよねー、わざわざアデム様の手記で調べてるなんて.....よっと」
と言って近くのアデム様の手記が集められた本棚から一冊を手に取って前に座り、広げ始めた。
「おい.......広げんな、前に座るな、気が散る! てかお前課題は?」
「そんなのとっくの前に終わってるに決まってるじゃん。あんなの一日でできるから出された当日に提出したよー」
「なっ......」
「ふふっ、あっ、それとも美少女幼馴染の私がいたら集中できなかったりしちゃう?」
「......バカが」
「あー酷いっ! そんな冷ややかな目で見るなんてー!」
極めて冷静に見えるように目を細めて言うが、内心はバックバクである。
それもそのはず、エレンは学園の中でもトップを争うほどの美少女だからだ、亜麻色の髪とぱっちりした瞳、犬を思わせる愛嬌のある仕草、それでいて内面も優しくお淑やかで少し抜けてるという、正直0歳の頃からの付き合いでなければ惚れているであろう、脅威的な幼馴染なのである。今もなんだかいい香りが漂ってくるような幻覚がする。正直あえて冷たい対応を取らないとどんどん調子に乗っていくので、少し辛いのだ。
「ふんだ! ピンチだったら幼馴染の特権で手伝ってあげよっかなって思ったけど、もう知らないもんね!」
と言ってあっかんべーをしながらエレンは行ってしまった。
「あっ、おい本直してけよっ!」
「......直しといてー!......」
離れていく幼馴染は止まることなく角に消えていってしまった。
「....ったく、ん? これって......」
現在自分が調べている神人歴の詳しい事柄のページが広げられて置かれていた。
「ほんとにあいつは......今度飯でも誘うか...」
美味しいものに目のないエレンの事だ、今度うまい飯でも奢ってやるかと心に決め、僕はまたレポートの続きに取り掛かった。
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「ふう、おかしくなかったよね...あたし」
角を曲がり、ようやく一息つく私。やはり少し話すだけでもかなり緊張してしまって隠せているか少し不安になる、あの幼馴染は妙なところで感は鋭いからだ。
「香水.......気付いてくれたかな....」
女友達に勧められ、首元に振りかけた香水を確かめるように自分の首周りの髪を匂ってみる。
いつもは鈍感なあの幼馴染の事だ、さして気にもしていないだろうと切り替え、教室への階段を登っていく。
「明日も話せるかな....」
淡い期待を胸に少女は帰りの支度を始めるのであった。
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