二章
第11話★
「ああぁあ、あぁあ!セックス!セックス出来りゃこの際誰でも良いんだよなぁ!」
「……」
「ここまで来ちまったらぜーんぶ!終わりだよ!終わる前にさぁ!好きなことして死にてえぇえ!せめて泣けよ!鳴け、泣け、号け、哭け、啼け!」
聞き覚えのある声のように感じた。
欲望と焦燥を剥き出しにした怒声は、げらげらと笑い声を響かせる。鼓膜が破れそうだ。
全裸で焼き尽くされた空を見ている私に、覆い被さる陰の形は、燻る黒煙でよく視認出来ない。
背中が熱い。頭部がじくじくと疼き悲鳴をあげる。片側のツノは折れていた。睫毛がベタつく感触は、頭部からの出血によるもの。
大きな胸は重力に従い、谷間なんて作れずに情けなく震えてる。この脂肪の塊は本当に邪魔だが、重宝されるのが悔しい。
嫌でも容易く尖るこの乳頭から、乳でも出たら、私は牛族になれたかな。無理だな。見た目がヒト族に近い。
今私を押し倒してるのは一体誰なんだろう。炎を吐き出す力が足りない。抵抗、しても……無駄だな。また殴られるかな。
だって今ここで抵抗しても、調教師の力のないキメラの魔力なんて、一匹か二匹ぐらいしか始末できない。
抵抗されても殺されない為に、私たち奴隷は最低限の飲食しか与えられない。
何日飲まず食わずだっただろう。最後に水を飲むことを許されたのは、生臭い白濁が喉に絡み付いたのを流し込む一杯だけ。
ああ、また四日前か。じゃあマシな方だ。通りで身体中の魔力が枯渇している。
鱗部分が薄く頼りない太腿を、両側から掴まれた。剥き出しの下生えから目を逸らすことしか出来ない。
早く終わらないかな、痛みっていつまで経っても慣れないんだよ。
股座を食い破る激痛が訪れる前に、覆い被さる陰が吹き飛んだ。
何が起きたのか一瞬分からなくて、私はただただ見上げていた。
今度の陰は、しっかり視認できる。
差し伸べられた手は、完全にヒトの掌だった。
「立て、走れ、逃げろ。ここは間も無く崩壊する。君だけでも逃げろ」
響く声は心地好い。
見上げると、男が一人。変わった眼鏡、何でレンズが黒いの?
太陽の光を透き通す白金の髪は乱れて、煤けて、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
それでも。
眩しいくらいに美しい太陽色の瞳を、私は未だに覚えてる。
「絶対に生き残れ、どんな手を使ってでも」
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