第4話 やらかした



 しかし、その夜。


 そんな恋の悩みが吹っ飛ぶような事が起きた。


 船をコントロールしていた機械が故障して、漂流し始めたのだ。


 見栄を優先して、安全面をおろそかにしたつけらしい。


 乗客達は船のスタッフに文句を言っていた。


 親戚がやらかした。


 けど、過ちを認めていないらしい。


 そういえば婚約者も昔はそんなだった。


 しかし、まだその時点ではましだったのだ。


 状況は嵐の到来でどんどん悪くなる。


 船が浸水しはじめた。


 沈没の危険もあって、乗客は大騒動。


 救命ボートで脱出しようにも外は嵐だから、どうしようもない。


 けれど、わずかな幸運が残っていたようだ。


 近くを船が通り勝った。


 わずかだが、乗客を救助できるらしい。


 人々は救助するなら、自分を先と手をあげはじめた。







 数分後。


 結論から言うと、船には乗れなかった。


 こちらの船に乗っている客の数が多すぎたためだ。


 まだ多くの客が残っている。


 ごく少数の客を救助して去っていった船は、他の船がすぐにくるといっていたが、この嵐の中だ。


 どうなるか分からない。


 乗客達は不安な時間を過ごしていた。


 そんな中、少しだけ状況がよくなる。嵐が静まってきた。


 救命ボートを降ろせるようになったので、船からの避難ができるようになった。


 私も乗れる事になったのだが、ボートに移動する際に押しあう客たちにもまれて、船からほうりだされそうになった


 しかし、そこを一人のスタッフが助けてくれたらしい。


 ぶっきらぼうな口調で「昔っからほんとあぶなっかしいな」といったその男性は、幼馴染に似ていると思ったあのスタッフだった。


 彼の姿は乗客の中にまぎれてすぐに見えなくなってしまう。


 もしかして。まさか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る