第7話 グリーン・オーシャン(後編)
【西暦2060年7月 日台帛連合皇国 神奈川県小田原市 プールセンター『福ノ浜』施設内】
「私は清川凛。こっちは私の双子の妹、
サングラスをかけた程度の変装では、間近でジロジロ見られてすぐに顔がそっくりである事を見破られてしまう。
開き直って堂々と嘘をついた方が怪しまれない。
凛はそう判断して発言したが、光輝は内心肝を冷やしていた。
「蓮です。宜しくお願いします」
凛Ⅱは全く動じる事無く彼女の『設定』に付き合い、双子の妹になる事を決める。
勿論、地元で会う様な事があれば即座にばれてしまう拙い嘘。
神奈川県でたまたま出会った赤の他人のままでいてほしい。
光輝はそう思っていたが、渋谷と名乗った老人は光輝の父親に興味を持っている様子だった。
「宜しくね。実は近々、君のお父さんと連絡を取りたいと思っているんだよ。
君から紹介してくれると話が早くて助かるんだが……」
「何故、父に会いたいと思っているんですか?」
偶然会ったにしては、少し話が出来過ぎている。
気付かぬ内に尾行されていたのではないかと言う疑念が光輝の中で生まれていた。
「お金があるからね。私のニューマンを作ってほしいと頼む為だよ。
高額なのは知っているが1億円なら何とか用意出来る」
生きている間に自分のニューマンを作ろうと考える人間は稀だ。
皇国において需要があるのは当人の許可がある『他人』の製造。
自分の伴侶になってくれる女性及び男性を作ってほしいと言う依頼が多かった。
(自分から、自分のニューマンを作ってくれと言い出す人……
しかも老人となるとあまり良い印象は抱かないな)
社会の中に自分と言う存在を残しておきたい。
死んでからも影響力を発揮し続けたいと考える人間は大抵、大きな権力を持っているものだ。
例えば極端な話、独裁的な権力を握っている人物ほど喉から手が出る程ニューマンを欲するだろう。
大切なのは自分が生きている事だけでは無く、その体制が永遠に続いていく事でもあるからだ。
自分の代わりとなる完璧な存在がトップに立ち続け、その国の自由は永遠に奪われたまま。
そうなる事を想定していたのか、彰浩は『強権を振るう者』には金を積まれてもニューマンを製造しないと宣言していた。
素行の悪い人物、『犯罪歴のある人物』も同様だ。
光輝は疑う素振りを見せる事無く、渋谷に対して質問を続けた。
「どうして、自分のニューマンを作りたいと思ったんです?」
「……『消える事』への怖れだよ。若い人は解らないかもしれないがね。
色々な事があった。嬉しかった事、辛かった事、様々だ。
そういうものを積み重ねてこの年まで来ると、最期が近付いてくるのが嫌でも解るんだよ」
渋谷はそう言うと、流れるプールで遊んでいる人々を眺める。
「一時、こうして遊んでいる時は死の恐怖を忘れていられる。
温泉に浸かる時、日本酒を飲んでいる時、寝ている時。
漠然とした不安に包まれて過ごすのは嫌なんだ。
私が死んだ後、私がやってきた色々な事が雲散霧消してしまうのではないか。
最初から、私なんていなかったかの様に世界が続いていく事を考えてしまうとね……」
渋谷は溜息をつきながら、再び視線を光輝の方へ向けた。
「ニューマンは、真の意味の救済じゃない。
私自身が不老不死になるなんて言う『魔法』では無い事は重々承知している。
でも、偽りでもそれが私の心の安息に繋がるのなら、縋っても罰は当たらないんじゃないか」
目に涙を滲ませ、同情を誘う様な言動を続ける渋谷。
それが偽りの涙なのか、それとも心から流したものなのか。
通り魔事件以後、人の善意を訝しんでいる光輝にもその判断はつかなかった。
「それに、二階堂さんの経営戦略において私の提言は非常に大きいと彼自身が認めてくれている。
嘘じゃない。丁度雲雀さんもいるのだから聞いてみてもらっても良い。
君から是非御父上に話しておいてもらいたいんだよ、私の事をね。
突然私が君の御父上に連絡を取っても、門前払いされてしまうかもしれないから」
人は嘘をつく時に饒舌になると言う。
彼がこのプールセンターにいて自分達とコンタクトを取ろうとしてきたのは決して偶然では無い。
二階堂雲雀の時とは違い、明らかに自分に狙いを定めている。
光輝は彼の発言全てを嘘だと断言する事は出来なかったが、敵対的な態度を取るのも愚策であると考えた。
(この人と仲が悪くなる様な発言は控えておいた方が良い。
向こうが何かを探ろうとしているのなら、こっちも色々と調べる事が出来る。
もしかしたらこの人が凛の死の真相を知っている可能性だってあるんだ)
ココは曖昧な態度でお茶を濁す。そして『脈あり』と思わせておく。
計画が成功したと思わせれば、相手は警戒を解き口を滑らせるかもしれなかった。
「解りました。渋谷さんの件に関しては、必ず俺の口から伝えておきます」
「有難う。そう言ってもらえると嬉しいよ」
両手で光輝の手をぎゅっと握り締め、頭を下げる渋谷。
あの映画の時の様に笑ったりしないかと顔を確認したが、そういった隙を一切彼は見せなかった。
「渋谷さんとは私も会った事があります。
父から紹介されて何度かお話させていただいた事もありました」
雲雀が渋谷に懐いている所を見るに、雲雀にとって渋谷は『第二の父』と呼ばれる存在であるかの様だった。
仕事が忙しくて同じ会社で働いていてもなかなか会えない父親。
寂しさを紛らわせてくれる渋谷の存在は自分にとっても救いであると雲雀は語った。
「渋谷さんがいなくなってしまったら、私も哀しいです。
だから、私も渋谷さんにはずっと側にいてほしい。そう思っています」
相談に乗り、アドバイスをしてくれた渋谷には頭が上がらない。
彼に絶対の信頼を寄せている雲雀であったが、凛も彼の『胡散臭さ』に気付いていた。
(うーん……どうしてなのか解らないけど、違和感があるのよね。
この人に会った時からずっと。何がおかしいって指摘は出来ないんだけど)
カツラを被っているだとか、そういう容姿の事だけでは説明出来ない。
肌で感じるしっくりこない感覚。説明は出来ないが何かが普通とは違う。
凛Ⅱも同じ思いだったが、仮面を被り無邪気にプールで遊んでいるふりをし続けた。
「渋谷さん、ボールどうぞ!」
「プールの方に投げない様に気を付けるんだよ。周りをよく見なさい」
プールサイドでボールを投げて遊ぶ雲雀と渋谷。
アイコンタクトで何かを伝えたい思いを互いに封印し、プールの中からそれを見守る凛と光輝。
用意されている椅子に座ったまま凛Ⅱもそれを見つめていた。
午後3時。さらに人が増え、プールサイドも騒がしくなってくる時間帯。
「そろそろプールから出て、海を見に行こうか」
光輝は浮き輪を使ってぷかぷか浮いている雲雀にそう呼びかけた。
凛も少し名残惜しそうにしていたが、プールから上がりそのまま分かれてシャワー室に向かう。
「コレは凄い景色ですね」
廊下の左右にそれぞれ大量の個室が用意されており、身体の流れを落とす事が出来る。
個室に入ると御丁寧にシャンプーまで設置されているのが解った。
(これは、お金を取ってもこれだけ多くの客が来るワケだ)
シャワーを浴びながらそう思っている光輝の耳に、渋谷の声が入ってくる。
「光輝君は、どう思っているのかな。
ニューマンが『救済』になるとは考えていないかい?」
恐らく同じ様に隣のシャワー室で身体を洗いながらそんな質問をしてきたのだろう。
光輝はどう答えるべきか迷ったが、そこは自分の思いを素直に伝える事にした。
「俺も、よくは解っていないんですよ。
俺のニューマンが俺が死んだ後に活動を続けたとしても、本当の俺が死んでいると言う事実は覆らないですからね。
自分自身のニューマンが欲しいとか、そんな事を考えた事はありません。でも」
光輝は一瞬言葉を詰まらせたが、何とか平静を装いつつ話し続ける。
「自分にとって大切な人が近くにいてくれると言うのは、誰もが心から願っている事だと思います。
それ以外にも、多分ニューマンが『人にとって』必要な意味はある。
持ち主の欲求を満たせるとか、自己満足とか、少子化問題解決とか。
それが正しいかどうかはともかくとして、別の形での救済はあると思ってます」
暫く沈黙が続いたが、数秒後にまた渋谷の声が聞こえてきた。
「……まだ君は子供なんだ。
死が自分の身に迫ってきた時、考えが変わる時が来るだろう。
今は私がそれだけ必死なのだと言う事を解ってくれればそれで良い」
会話はそれきりだったが、光輝は凛の事に思いを馳せる。
(確かに俺はまだ子供だし、凛は自分が死ぬなんて思ってもいなかったに違いない。
でも、それが当たり前なんだ。
若い人間が死を身近に感じるなんて事があっていいハズが無い)
シャワーの水滴に己の涙が加わって流れていく。
凛の笑顔が、凛との思い出が蘇る度に心が苦しくなった。
彰浩が自分の為に清川凛のニューマンを作ったのは、正しい事だったのか?
虚しさを感じる事も、ニューマンであっても凛の存在に救われる事もある。
人間は答えを出せない不完全な生き物だ。
光輝は俯いたまま、そんな事を考えていた。
着替えを済ませ、プールセンターの入り口で合流した凛達は、小田原の海岸へと向かっていた。
砂浜の近くには柵が並んでおり、近付く事も禁止されている。
だが、遠くから眺める行為は禁止されていない。
うだる様な暑さの中、光輝は思わず空を仰いだ。
(この時間帯は一番キツいとは思っていたけど、ちょっと気温が高すぎやしないかな……)
プールに入っていた時はあまり感じなかった暑さが、今は肌で感じる事が出来る。
滝の様な汗をかきながら彼等についてきていた渋谷だったが、向こうから歩いてきた青年と肩をぶつけてしまった。
「オイ、気ィ付けろよジイさん。ちゃんと前見て歩けよな。ッたく」
Tシャツに短パンとラフな格好をしている男性だった。
日焼けした肌にサングラス、金髪、耳にピアスと真面目さは殆ど感じられない。
「やめなさいよォ。おじいちゃんに悪いじゃな~い」
少し後ろを歩いていた女性も褐色肌に金髪、上がビキニとプールへ向かう様な恰好をしている。
2人とも渋谷を馬鹿にする様な言い方で、年寄りに対する敬意は微塵も感じられなかった。
「皇国の若者も、風紀の乱れが出てきているのかな」
「あんなの、ごく一部ですよ。殆どの人は丁寧な言葉遣いを心がけてます」
へらへらしながら歩く2人を振り返って目にしながら、渋谷は大きな溜息をつく。
「そうだといいんだけどね。
最近は日常の有難味を理解している者達が少なくなってきて困るよ」
頭の悪い生き方をしている。
口に出して言いはしないが光輝は先程の男女にそんな印象を抱いた。
その時その時ばかりを楽しんで、その先に何があるのだろう。
刹那的な享楽に溺れている人々の気持ちが、光輝には全く解らなかった。
海。一面に広がる毒々しい緑色をした海。
それは深緑色と言うより、蛍光色の緑の様だった。
「昔は青かったんだよ。約30年前まではね」
光輝や凛、雲雀はその当時の事を知らない世代だ。
東京都の荒廃した写真を見た事があるが、全く現実味が沸かなかった。
「第三次世界大戦で皇国の敵に回ったある国が、皇国の妨害を行う為に毒を流したんだ。
いや、皇国だけじゃない。今では世界の半分の海がかの国が流した毒によって汚染されている。
まともに人間が海に入って遊べる時代は終焉を迎えた」
皇国では海の魚が全滅した。
餌となるプランクトンが死滅した為無事だった海でも魚が姿を消している。
真水で育てられた養殖魚も国民全てには供給出来ていない。
プールの水も飲料水も、全てその毒水を何度も濾過して使用されていた。
「戦争の爪痕が唯一残っているのがこの海だ。
私は当時海の色が緑色に変わっていく過程を全て見ており、愕然とした。
こんな事は、今後決して起こってはならない」
皇国は核こそ落とされなかったものの、戦闘機による焼夷弾での被害や毒ガスを噴霧するドローン兵器等により大きな打撃を受けた。
敵国が大インド帝国やアメリカ合衆国に敗れるまでそれは続き、多くの人々の心にトラウマを植え付けている。
「皇国がここまで被害を受けた理由。それは力が無かったからだ。
力を持たない国は容赦無く蹂躙される。
抑止力が無ければ大国は小国をあっさり陥落させてしまうだろう」
渋谷は神妙な面持ちで海を眺めていた凛達に向かって話し続けた。
「この海は、弱者が敵国にいいようにされたと言う証拠でもある。
皇国は様々な土地を手に入れて自衛軍を組織出来る様になった。
だがまだ足りない。米印冷戦が表面化してきた今、同じ過ちを繰り返してはならない」
大きな国が破れ別の国に吸収されれば、そこが別の大国となっていがみ合いを始める。
そして互いの目的が一致せず戦争に発展する。
渋谷はそれを自分の目で見てきたからこそ、それを止めなければならないと思っていた。
「いざとなった時に、皇国の民は自分達を守れる様にしておく必要がある。
軍備が絶望的に足りない。
アメリカ合衆国から核ミサイルの保持を認められてしないのは皇国くらいのものだ。
ならばもっと必要だ。2つの国が爆発するのを防ぐ為の『巨大な抑止力』が」
熱にうかされた様に喋っていた渋谷であったが、我に返ると凛達から視線を逸らす。
「すまない。少し本気になり過ぎてしまった様だ」
光輝は『戦争を知らない世代』であったが、渋谷の発言に危うさがある事は理解出来た。
「抑止力は大事だと思いますけど、それも度が過ぎれば火をつける為の導火線になってしまう。
皇国は『ニューマン』と言うアドバンテージを得て自衛軍の力を大幅に縮小した。
俺は、それ位で良いと思ってますよ。少なくとも今は」
米印冷戦が始まっているのは事実だが、少なくとも大インド帝国は独裁国家では無い。
アメリカ合衆国との仲がそれ程良くない事は両国の首脳が認めている。
それでも共に前に向かって歩んでいこうと協調路線に転じつつあった。
「本当に、それで良いんだろうか」
夕日に変わりつつある太陽が、けばけばしい緑色の海を照らしている。
渋谷の意見に賛同する者も異を唱える者もいなかった。
ただ、おごそかな気持ちで海を見つめるだけだった。
言葉では容易に説明出来ない、寂しげな感傷に浸りながら。
光輝達4人は渋谷と小田原駅で別れる事になった。
近くの旅館に予約を入れており、一泊してから帰宅すると言う。
「温泉付きの良い旅館だよ。ここだけの話、値段もかなり高いんだ。
この所忙しかったから、たまにはゆっくり羽根を伸ばそうと思ってね」
笑顔の裏に時折垣間見える狂気。
彼と近付く事は危険であったが、近付かなければ情報は得られない。
「またいずれ機会があったらお会いしましょう。
父には渋谷さんのお願いの事は話しておきます」
「有難う、助かるよ!進展があったら、この番号に電話してくれ」
電話番号が書かれた名刺を渡し、手を振りながら去っていく渋谷。
彼の姿が見えなくなった後、光輝は凛や雲雀と顔を見合わせた。
「僕達も帰ろう。遅くなると親が心配する」
凛は頷き、切符を購入する為改札横に設置された液晶画面の前に立った。
『私達は起きてますから、光輝さんは遠慮しないでいいですよ』
その言葉に甘える様に、凛の肩に身体を預け軽い寝息を立てる光輝。
「疲れたんだね。ゆっくり休んで」
最寄りの駅まではかなりの時間がかかる。
駅に到着した後は解散し、それぞれの家へと帰宅する予定だった。
「なんか、張っていた緊張の糸が切れてるみたい。
あの人、ちょっと怖かったからね」
渋谷の事を言っているのに気付いた雲雀は怪訝そうな顔をする。
「そうですか?あの人は私に良くしてくれますし、悪い人だとは思えません。
確かに、顔はちょっと怖いですけど……」
「威圧感、って言うのかな。迫力があったんだよね。
目に見えたりするものじゃ無いんだけど、私達は常に圧力を感じてたよ」
それもまた、言語化する事が出来ない場の雰囲気の話である。
ピリピリした空気等、人は視覚では感じ取れないものを敏感に感じ取る事が出来る。
人間を完璧に模倣したニューマンも、そういったものを感じる事が出来た。
「それにあの人、背中がね……ちょっと変だったんだよね。
作り物みたいで。だから敢えて目に入れない様にしてた」
それはまさに人造皮膚が背中に貼られているかの様な不自然さ。
些細な、相手に指摘する事も出来ない違和感。
電車に揺られながら、彼女はおぼろげにその違和感の正体が見え始めていた。
「会長、お疲れ様です」
旅館の前に黒いスーツに身を包んだ人相の悪い男達が並び、一斉に頭を下げる。
渋谷は近くにいた男に近付くと、小声で囁いた。
「お前たちも遠くから見ていただろう。
あの金髪のガキども、皇国には不必要だ。探し出して『処分』しておけ」
頷き、スマートフォンで何処かに連絡を行う男性。
渋谷は満足げな表情を浮かべながら旅館の入り口をくぐる。
スーツの男達は彼の両端につき、どんな命令が下されても対処出来る様にしていた。
「二階堂臣人から、次のブルーウィンターの密輸の日取りについて相談したいと言う連絡がありました」
「なぁに、何時も通りPCの中に隠して船で運べば済む事だろう。
何度もやってる事で今更ビクビクするんじゃねぇと伝えておけ」
渡された葉巻を口に咥え、部下に火を付けさせる渋谷。
「どうでした。美輪光輝の第一印象は」
「ただのガキだよ。だが、本心を完全には見せまいとする感じはあったな。
最初は優しくして様子を見てやるが……いざとなればあのガキを人質に取ってでも俺のニューマンを作らせる」
先程とは全く違う、獰猛な猛獣の様な姿を見せる渋谷。
今まで見せていた姿が偽物ならば、その名前も仮のものでしか無かった。
「
「当たり前だ。俺が1人で立ち上げて大きくした組織だぞ。
俺がいなくなればあっと言う間に跡目争いを起こして瓦解する。
そうなる前に俺のニューマンで『鳳壮一体制』を固めておかねぇとな」
第三次世界大戦直後の荒廃した東京から生まれた怪物、
彼は暴力団組織『鳳翔会』を作り上げ、覚醒剤である『ブルーウィンター』の密売によって巨額の富を得た。
樺太を経由してロシアから大量のマシンガンを買い入れ、政府が危険視しても容易に手が出せない程軍事力が強化されている。
過激な思想を掲げ、関東の裏社会を牛耳る男。それがこの男の正体だった。
「俺の権力を奪おうと隙を伺っている奴等がこの組織内にどれだけいるか。
そいつらを排除しようにも現状が把握出来てねぇ今、ニューマンを作っておいた方が早い。
ニューマンなら斬られようが撃たれようが、手榴弾が爆発しようが破壊出来ねぇからな」
権力者が最後に望むのは、その努力によって得た権力の保持。
自分が永久にそのとてつもない権力を握り続ける事は多くの為政者にとって最終目標であった。
それが疑似的ではあるが、ニューマンによって実現出来るとあれば鳳がそれを願うのも当然だろう。
「勘違いするなよ。大切なのは俺が生き続ける事じゃねぇ。
鳳翔会が何のトラブルも無く正しい形で存続し続ける事だ。
その為に俺は抑止力として銃を買い入れてきた。
近々、戦車や対空ミサイルを購入する予定もある」
最早暴力団と言うより軍事力を持った巨大なテロ組織に近付いていると言ってしまって差支えが無い。
鳳の権力欲は暴走し、皇国と戦うのではと怯えている組員もいる程だった。
「皇国政府は弱腰過ぎるんだよ。
ニューマンさえあれば軍事力は縮小しても良いなんてほざきやがって。
俺に言わせれば現実が見えてねぇ性善説信者だ。
俺はもう、この国の惨めな姿を目にするのはまっぴらごめんだぜ」
生み出された怪物は増長し、生み出した国を脅かす存在となっている。
そしてこの鳳翔会が連続通り魔事件と関係している事を、犯人以外はまだ誰も気付いていなかった。
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