9.エピローグ
「いらっしゃいませ」
Tシャツにパーカーを羽織った少女が、店内に入ってくる。軽い会釈をして、カウンター席に座った。俺は注文を取ることなく、ブレンドコーヒーを淹れる。
「どうぞ」
彼女が置いた、数枚のコインを、カウンターの内側にある袋に入れる。外では大きな掛け声が聞こえる。今日はこの辺りを屋台が練り歩く祭の日だからだ。
「今日は外が騒がしいですね」
また、ドアを通じて歓声が聞こえた。俺はエプロンを外してフックに掛ける。そしてカウンターの外に出る。
「では、始めましょうか」
「そうやね。さっさと終わらせて、私達も行こう」
「大津さんが来るまでに終わらせよう」
「やっぱ敬語似合わんね」
「だめかあ。他のお客さんは気にしてないようだけど」
「それは関心がないだけやろ?」
「辛辣だな」
俺は苦笑して、自分の分のオレンジジュースを飲む。
冷ややかな風が、珈琲の残り香を運んできた。
僥倖、黄昏に叫び 時津彼方 @g2-kurupan
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