第22話 ザ・フール
「これが本なのか?」
チクカンを見せるとクレイブはシオンやリーザと同じ感想を言った。ベリーニ、ロズワルド、リオンも同じ感想だったらしい。
「これは…昔の書簡かな? しかし何でまたこんな物を」
ベリーニはそう推測し、そして感想を述べた。
チクカンはその形式こそ古かったが、物そのものはスコットが言った通りそんなに昔のものではない。判定はできないがその奇妙な小札の枯れ具合から予想しても20年も前のもとも思えなかった。
「まあ、持ってくしかないわな」
クレイブはそう言った。明るい所で見ると何やら文字のようなものが書かれているのは分かるが、それがウォントモリの古語かどうかはロズワルドも分からなかった。
ウォントモリは隣国であり会話も普通に通じるが文字の形式が違う。学べば習得は出来るだろうが会話が通じるのでその必要性が薄い。ましてやその古語など学ぶ必要など全くなく、そもそもロズワルド以外は学のない五人には全く分からなかった。そのロズワルドも分からないとなるとどうしようもない。
「何となくだけどこれは何かの記録みたいだね」
ロズワルドはそう付け足した。経典や詩文にしては文章全体にまとまりや形式を感じないと言った。ある所ははみ出しているし行数や文字数も合わせてない。
「宝物の地図とか?」
もはや一文無しとなったリオンがそう言った。働け。
フェリクスさんはしばらく仕事がないと言っていたので当然今日は現れなかった。まあ明日にでも事務所にでも行ってみよう。別に期限があるわけでもないし。
それよりちょっと面倒な状況になったのをシオンはやっと認識した。リオンが帰ってきたのでリーザの部屋に行きづらくなったのだ。今日リーザがリオンに絡まないのは、逆に本気で彼を邪魔に思っていたからだった。
「なあシオン、俺らは親友だよな?」
その親友の内心など全く構わずにリオンはそう言った。
「おいリオン、分け前を横から手を出すのはご法度だぞ」
ベリーニは呆れてそう言った。ベリーニはしょっちゅうこの色ボケ男から借金を頼まれるので、断る口実を探すために掟に詳しくなったのだ。
「借り!借りだから!ホントやばいんだって!」
リオンは粘る。リオンは借金を踏み倒すことはないのだが、その返済が10日で10ボルドと言われたらふざけんなバカとなるのは当然で、しかしさすがに仲間内で利子を取るのも心苦しく、また利子なんか取っても払えないだろうという事で、結局何かしらリオンをコキ使うしかないのだが、つまりそれは彼に仕事を斡旋するようなものなので、貸すほうはたまったものじゃないのであった。
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