第16話 初めての行為
「…どうだった?」
事が終わるとリーザはくすくすと笑いながらシオンにそう訊いてきた。
「…ありがとうございました…」
シオンは天井を見ながら殊勝にそうとしか言えなかった。その回答を聞くとリーザは枕に顔を埋めて大笑いをし始めた。
「でもやっぱり男だよねあんたも」
リーザはにやにやしながらそう言った。性欲が低いなどと誰のことか、僅か1時間の間にシオンとリーザはなんと3回戦も致していたのだ。ほぼ一ヶ月分である。
シオンはこの1時間の事がよく分からなかった。覚えていたのは生まれてはじめて見る女性の性器がよく分からずぼんやりとしていた事と、その唇と乳首を夢中になって吸っていた事と、リーザの乳房と身体が激しく揺れていた事だけだった。
「…リーザ、さん」
シオンはぼんやりとした口調でそう言った。その言い方にまたくすくすと笑うとリーザはなあに?と訊き返してきた。
「…もし妊娠してたら、責任はちゃんと取ります…」
その言葉にリーザは枕に顔を埋める暇もなく吹き出した。可愛い、と言いながら大爆笑している。そしてそれが収まるとまた唇を重ねてくれた。
「まあ、そうなったらよろしくね」
唇を重ねるというか、舌を絡ましてくれている。それにまた性欲を刺激されたが、それはむしろ気が遠くなるのを感じた。なんか、血がなくなったみたい。
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シオンが唐突に男の通過儀礼を済ましていた頃、フェリクスはとある邸宅に居た。いつもの黒背広をちゃんと着て、腕を後ろに組んでその男の前に直立している。
「見つからなかったか?」
男はフェリクスにそう声をかけた。別に怒っている風ではない。ただ予想外の回答に意外そうな感じで言っただけだった。
「まだ横領品を点検させております」
フェリクスはそう言った。点検というか、本があったら持ってこいと言っただけだが、むしろそのほうが有効だろうと思っていた。点検などと言えばあの小僧どもが真面目にやるとは思えなかった。
フェリクスの前に座っている男は40代半ば程で、フェリクスと同じ様に黒い背広を着ていた。しかしフェリクスのそれよりも明らかにいい生地である。
「まあ他に情報もないし、しばらく待つしかないな」
男はそう言うと立ち上がりワイン注いでフェリクスに差し出した。
「まあまだ働いてもらうがとりあえずはお疲れさん」
男はフェリクスを労った。フェリクスをそれを受け取り乾杯して一口飲む。
「ご配慮、痛み入ります閣下」
男の名前はノルド・ウォーリス。予備役准将にして「征旗の騎士」勲爵士の勲位を持つ暗黒騎士の将官だった。先の戦争で暗黒騎士を指揮した将官の一人で、もし暗黒騎士団があんな事にならなければ今頃さらに上の階級になっていたはずの男であった。
「あの文章は武器にも毒にもなる。以後も頼んだぞ」
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