第12話 強奪の報酬
お宝は現金だけ綺麗に山分けして、後は現物を代わりばんこに支給するだけだ。これを換金するとなると時間も手間もかかるし交渉次第で価値が変わったりする。現物は支給してやるから後はお前ら次第だ、という訳である。
儲けは一人頭3000ボルドと渡されたお宝になった。これは結構個人差があるがフェリクスさんが見張っているので贔屓はできない。まあ実はこっちのほうは最初からあまり期待していなかった。宝石なんて換金しづらいし、借用書なんて訪ねてみたら不幸な家庭の事情があったりしたらたまったものじゃない。薬物なんて怖いこわい。
「よし、では本作戦はこれにて終了する。しばらくは作戦の予定はないのでこの後は自由行動でいいが来週中にはシュレッドリーンに戻っておくこと。以上!」
フェリクスさんはそう言うと各リーダーに馬車を航路厩舎に返しに行くように指示してさっさと宿泊先に帰ってしまった。用が済むとすぐ帰る人だ。
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宿に戻って改めてお互いの収穫を確認しあった。
「麻薬なんてこれどうするんだよ」
ベリーニは呆れた感じでそう言った。麻薬の販売は法律は当然、掟でも基本禁止されている。隠れて売買するものは多いけどベリーニにそういう伝手はなさそうだった。
「…宝石ねえ…」
リーザも困惑していた。使えるアクセサリならともかく、こんな大きな石が乗っかった指輪を若い女性がつけてたら変だろう。
「…趣味の悪い時計だ…」
ロズワルドも呆れていた。金の置時計なんて作るのにはお金がかかりそうだが、いざあっても処置に困る。
「俺なんて証券だぜこれ。どうやって換金すんだよ」
リオンも困惑してそう言った。証券はもっとも換金しづらいのだ。正規の証券所に持ち込んでもチェックは厳しいし、流すにしても買い手を探すのも一苦労である。
そして僕はなんだかよく分からない小物をいっぱい手渡された。木はこれ香木かな?こっちの箱はなんだこれ? この枕みたいの価値あるのかな?
「まあ現金だけだって大儲けだろ。文句は言わない」
リーダーらしくクレイブがそう言った。クレイブはリーダー特権で新品の鎖帷子一式を確保していたので機嫌は良かった。
ひとつ確かな事は、現金収入があったのでこの逢引旅籠での共同生活は今夜限りという事だ。しばらくは皆個室を借りて僅かなプライベートを楽しむ事になるだろう。
どうせシュレッドリーンに戻ればまたリオンとの共同生活が始まるし、リオンはどうせすぐ娼館に行くだろうしで僕もしばらく独り身を謳歌したかった。
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