第11話 ちゃんと伝える

えっほ、えっほ。

お宝はバケツリレー方式で次々と荷馬車に詰め込まれた。一見手間がかかりそうだが、実は手に持てる荷物を運ぶならこれが一番速いのだ。一行は横に並びつつ、たまに倉庫内の都合で列は奥に進んだりしていた。


こりゃいいお仕事。

シオンたちはこの仕事が危険なものにならなかった事と、彼らに特別な役割を与えられた事に満足していた。逆に他2グループは夜目にもちょっと呆れたような顔をしている。まあみんな基本的に貧乏だから文句はなさそうだけど。


お宝の隠し場所の情報はフェリクスさんが掴んでいた。夕方頃からグループ毎に分かれてその倉庫の近くに行ったが見張りがいない。ガセネタ? そう思ったらベリーニ、リーザ、ロズワルドを呼び出して役割を与えた。


「ベリーニとリーザは恋人っぽく倉庫の周りをウロウロしてろ。ロズワルドは物見の術シーイングを応用して二人を見てる視線を割り出せ。割り出したらジッドのグループで強襲してふん縛れ。手に余るようなら殺して構わんがなるべく生かせ」


なるほど。確かに強制捜査で避難させたお宝の前に見張りなんか張り付いているはずがない。どこかから近づいてくる人間が居るかを見張っているということか。


フェリクスさんの作戦は成功した。見張りを殺す事もなく目隠し猿轡をしてぐるぐる巻きにして柱に縛り付けたという。さてお宝だと倉庫に向かう前に命令が下った。


「掠め取りは許さん。後で点検する」

フェリクスさんと各リーダーを都度二人選びもう一人のリーダーのグループを身体検査するという。もし掠め取りが発覚したらその場で殺すと言われた。怖わ怖わ。


ただし色々問題があるのでリーザだけはこのバケツリレーから外すとの事だった、代わりに彼女は辺りを巡回して見張りとなった。


用意した荷馬車3台がまあ満載くらいのところで撤収の合図がでた。まだ半分程も残っているが、これ以上は運び出してもしょうがない。馬車はそれぞれのリーダーが操り、他は徒歩で予めの集合場所に向かう。


---


盗賊団への強襲はリスクのある仕事だが、成功すればかなり割のいい仕事でもあった。なにせ同じ穴のムジナなので換金しづらい有価証券などは少なく、現金や宝石、あるいは薬物や個人契約の借用書などばかりである。


「経費も含めて2割は俺が頂く、あとは一人4%で山分けだ」

フェリクスさんはそう言った。情報を掴んだだけではなく、馬車を5台も用意して行軍中のレーションも全てフェリクスさんが用意してくれたのだ。実際に手にするのは1割もないかも知れない。


しかしフェリクスさんは不機嫌だった。運び出したお宝には本のような物はなかった。運び出した借用書にも少し目を通していたがお目当ての物はないらしい。


「…ガセネタか…」

フェリクスさんはそう独りごちて改めてメンバーに言った。


「これから山分を行うが、もし妙な本か、或いはそれに類するような物があったら後で俺の所にもってこい。目当ての物なら買い取ってやる」

決して損はさせない価格は出すと言った。他のグループの一人がそれはどういう特徴があるものですか?と訊いたが


「ウォントモリの古語が書かれてある」

その言葉にメンバーは困惑した。ウォントモリの古語って分かる? という空気が集合場所に漂う。みんな学なんてないからね。

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