第9話 最初に笑うのは彼だ
二日後にミッドウォールに入るとまず一日は休暇と言われた。とはいえ滞在費用は自腹なので僕らは逢引旅籠に分かれて泊まった。クレイブとベリーニで一部屋、僕とリオンとロズワルドで一部屋、さすがにリーザは一人で部屋を借りた。
「僕はソファでいいよ」
ロズワルドは部屋に入る前から殊勝にそう言うのでラッキーだと思ったが、入室したらその先見にしてやられた。部屋にはちょっと大きめなベッドがあるだけだった。身体の大きなリオンに7割は占領されそうだし、ひょっとしたら寝ぼけたリオンに襲われるかも知れない。
「そしたらぶん殴るからな」
シオンはそう言っておいた。おおそうしてくれとリオンも返した。健康で極めて標準的な嗜好を持つリオンは、寝ぼけて女顔の幼馴染を襲うくらいならそのほうがマシだと答えた。
旅の疲れを癒すために共用浴場に行って戻って軽く昼寝するともうやることがなかった。朝早くついたのでまだ昼過ぎである。
「金さえあればなあ」
リオンは独りごちる。また女かよ、と思ったらそうではなかった。はやく出世して広い家に住みたいといった。ああまあお前でかいからな。
「そしたら魔法でも覚えなよ」
ロズワルドも目を覚ましてそう言った。
「逆にロズワルドは剣術でも磨いたら?」
シオンはそう訊いてみたが彼は頭を振った。
「僕は別に暗黒騎士になりたいわけじゃない」
このグループに参加したのは魔法の実践経験を得るのに適しているからだと言った。グループ内で一番学者肌の彼は、彼らしいキャリアプランを言った。
「魔道士認定試験の受験資格のひとつに該当するんだよ」
実務で3年以上の魔法経験が必要だと言う。僕らって就職してるのこれ?
「就職じゃなくてもボランティアでも社会活動でも何でもいいんだよ」
でもボランティアや社会活動では肝心の魔法技術が上がらないのだと言った。そのため、実は彼は従士という扱いにしてもらっていたのだ。名前だけだけど。
しばらくするとベリーニが、さらに少し経つとリーザやってきた。暇なのはみんな変わらないらしい。
「暇だから話にきた」
二人はそれぞれ入室時にそう言った。まあねえ。
暇なので何故暗黒騎士の下部組織に参加したのかをお互いに話す流れになった。
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