第5話 ダメなやつら

「ええ、あたしも?」

リーザが当然の質問を発した。もちろんこれは命令なので拒否はできないのだが、いつも荒事なら彼女は後方待機という名目で外してくれるのに。


「むしろ一番安全で役に立つからでは?」

ロズワルドがそう言った。無表情に言ったがそれは皮肉なのか本気なのか。


「"女"を使えって?」

リーザが睨みつけながらそう言った。こんなに露出が激しいくせに女の武器を使うのはイヤがるのだ。「身体を売るなんて絶対にイヤ」それが彼女のポリシーだった。


「ボクなんかどうすりゃいいんだ」

ベリーニが口を真っ平らにしてそう言った。彼は逆に自分の"男"を使って収入を得ているわけだが、多分この中で一番荒事に向いていない。歳上で背も高いが僕が喧嘩しても勝てそうである。


「まあ同じ方向で頑張って頂くしかないかなと」

ロズワルドはまたしても無表情にそう言った。


「冗談じゃないよ」

ベリーニがそう返した。暴行に対してより強い嫌悪感を抱くのは実は女性より男性である。まあ誰だってイヤに決まってるけどね。


「お前はなんか魔法で攻撃とかできんのか?」

リオンはロズワルドにそう訊いた。六人の中では武闘派に分類されたがあくまでこの六人の中の話である。街で喧嘩して十人中七人くらいには勝てるかな?程度だ。


「そんな事できたらもうちょっとマシな生活してるよ」

ロズワルドはあっさりそう言った。せいぜい五感に影響する魔法が使える程度だよ、と付け加えた。それはそれでなんか凄そうだけど。


「まあシオンの役割は決まってるから、途中まではシオンを守ることになるのかな」

ベリーニはそう言った。どうもこの男はわざとなのか素なのか、悪い意味で言葉の裏を連想させる。つまり宝物庫の鍵さえ開ければあとはまあ、と聞こえた。


「まあフェリクスさんだって鬼じゃないし、考えがあるんだろう」

クレイブがそう言った。実際そうかも知れないけど、あんたは何も考えてないよね、と五人は心の中でそう思うのであった。クレイブはいい兄貴分だし本当に武闘派だが、魔法なんて全く使えないし、基本的に計画なんか一切考えていない。


というか。シオンは改めて自分たちを見渡した。この中で剣士として戦えるのがクレイブとリオンだけ、明確に魔法が使えるのはロズワルドだけである。なんでこれで暗黒騎士配下の兵隊なのだろうか。みんな何でこのグループ入ったの? と自分の事を棚に上げて不思議に思うシオンなのであった。



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