第3話 お金がない!
約10年前に我がキリウスとウォントモリの戦争は終わった。結果は痛み分けで、どちらも何も得るところのない戦争だったと聞く。
しかし、だからこそ戦争の爪痕は国に悪影響を及ぼした。僕とリオンは物心がついた時には既に戦災孤児であり16歳まで孤児院で共に過ごした。詳しくは知らないがグループのメンバーも似たりよったりだろう。
そして停戦は軍事力にも影響した。戦争中はキリウス最強部隊と言われた暗黒騎士団は停戦と共に解散に追い込まれ、弱いものいじめの代名詞と言われた神聖騎士はまるで戦争の立役者みたいに大手をふるい始めた。
そんな恵まれない子供たちと割りを食った元暗黒騎士たちは暗黒街で生活をして行かざるを得なくなったのである。
「そろそろフェリクスさんが来る頃だな」
クレイブはそう言った。クレイブはこのグループのリーダーだがさらに上がいるのだ。僕とリオンはフェリクスさんを待ちながら、エールをソーダで割ったものをちびちびと飲みながら生活費の計算をし始めた。
「家賃で200ボルドずつだから一人400ボルドかあ」
まあこれで3週間くらいは何とかなるか。その間にまた次の仕事を探さなきゃ。
「やべえな。これじゃもう来週からでも働かなきゃ」
リオンはお金を眺めながらそう言った。また娼館いくのかよ。
僕と同じ17歳のリオンは、孤児院を出ると同時に女を覚え、以降それに溺れっぱなしだった。大柄でそれなりに見た目も良いのになぜか素人女には全く手が出せず、代わりに娼館に足繁く通っているのだ。
「リーザにでもお願いしたらあ?」
半ばは煽るようにそう言った。二人からざけんなバカと返ってきた。
別にグループ内で恋愛が禁止されている訳ではないが、お互いがお互いのイヤなところから見知ってしまった二人は、気が合うにも関わらず付き合うことはなかった。いや実は裏で付き合ってたりして。ありそう。
「女を抱きたいならお友達でもいいんじゃない?」
嫌味と皮肉を混ぜ合わせてリーザはそう言った。悪かったな女顔で。
背も低く、ひげもほとんど生えず、おまけに女顔ときたものでシオンはよくからかわれるのだ。しかし17歳ともなれば女と間違われることもなく、それ故かえって男色的な方向でからかわれる事が多い。というか実際そういう話を言われた事もある。
「いらっしゃったぞ」
三人のいつもの掛け合い漫才など気にもとめずクレイブがみんなにそう声をかけた。
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