第2話 シーブス・ドリーム
「ほう、こりゃあいい革だな」
なんでも屋のスコットはシオンとリオンが持ち込んだ革を見てそう言った。スコットは名前の通りの「なんでも屋」で、つまり闇ブローカーだ。
スコットは表の商売も裏の商売も飄々として行っており、そんな商売をしてるにも関わらずあまり悪どいことをしない事で名前が通っていた。
「商売は信用第一」
それがスコットの口癖だった。しかし悪どいことをしない代わりにその鑑定眼は確かであり、また金銭にも厳しく、シオンとリオンのように人生経験の浅いものなどはしょっちゅう煮え湯を飲まされるのも確かであった。
「いやお前らいいもの持ってきたな」
スコットは素直にそう言った。よしよしこれなら1枚100ボルドは行きそうだぞ。
「1枚60ボルドってとこかな」
シオンとリオンは思わずコケそうになった。なんでだよ!
「いや本当にいいものだぞ。ここ見てみろ」
と言って革の端と中央の中間あたりを見せてきた。ああ!
暗い蔵の中では分からなかったが、そこにはしっかりと焼印とシリアルナンバーが打ってあったのだ。
「この部分は削んなきゃダメだから2/3ってとこだな。毎度」
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「ばーか」
リーザは話を聞いてけらけらと笑っていた。最初に会った時はその際どいショートパンツと胸元が大きく開いたノースリーブは恥ずかしくてまともに見られなかったが半年も経てば見慣れるものだ。
「大体にしてそれじゃシーフだよ」
ロズワルドは呆れたようにそう言った。そういうお前だってほとんど魔法使いだろうが。黒ローブなんか着ちゃってさ。
「まあ二人共上納金は用意できたんだしおめでと」
ベリーニは一応そう言ってくれた。このグループの中では稼ぎ頭なので余裕を見せつけたのかも知れない。向いてるのは分かるけどホストはないでしょ。
「そうそう、稼ぎ方なんかどうでもいいのさ」
リーダーのクレイブがそう言ってくれた。リーダーにして唯一一番まっとうな方法で上納金を稼いでるので逆に鷹揚である。
せっかく勇んでオークの住居まで拝借に入ったのに、結局ふたりで1200ボルドにしかならなかった。これなら明け方までかかってもまだ安全な魚介密猟のほうがよかったかも知れない。
毎月の上納金は一人100ボルドである。六人で合わせて600ボルド。安いと言えば安いが相場がわからず、また定職のないシオンとリオンにとってはわりと重いのだ。
ここはシオンたちのグループのたまり場であるバー・オリオンである。バーと言ってもマスターがそう言っているだけで、実際には旅籠の居酒屋といったほうが正しい。まわりの客も普通の勤め人ばかりで危険な空気は全くない。むしろリーザなど三日に一度はナンパされたり尻を触られたりしてるくらい緊張感がなかった。
ここの常連客は僕たちのグループなどちょっとオマセな不良少年くらにしか思っていない。いやそうとすら思ってないかも。何せ僕らはここでも外でも目に見えるところで暴れることなどない。それにはちゃんと理由がある。
「無意味な暴力はこれを許さず」
僕らには典範、いや掟があるのだ。
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