第14話 クラスメート
同世代だらけの生活に馴染みのない少年にとっては未知の領域と言って良いほどの世界だ。
「やべ。緊張するわ」
早めに出て正解だったと思う。死地を何度も経験したからと言って全てのことに対応出来るとは限らないと思わせられる。廊下には亮太一人。これなら心の乱れが治まるまで時間を作れる。
しかしそこで気づいた。早過ぎて教室には誰もいないのではないだろうかと。そうであるのなら今緊張するのは無駄だと。その結論に至ると緊張するのが馬鹿馬鹿しくなって亮太は扉を開けた。
前方の扉が開くと中に居た数人の男女が亮太に注目した。クラスメートが居る可能性を排除していた彼にとっては不意打ちだった。心臓が一回、跳ね上がった。
「おはよう」
亮太はすぐに自身の精神を整えて完璧な作り笑顔で対応した。クラスメートの返事を聞きつつ電子板に目を通す。
人数分の名前が書かれた座席の配置を見て小笠原の名を探し出す。亮太の席は廊下側から一列目で前から四番目。
自分の机にスクールバッグを置いて座ると左横から声をかけられた。
「おはよう。うちは
「小笠原亮太だ。よろしくな」
彼の名を聞くと二人ともに目を見開いた。
「小笠原って、あの小笠原?」
鈴山は恐る恐る尋ねる。だが、しゃんと少年の瞳を見つめるあたり、小笠原家に怖がっているというよりは立ち入って良いのか迷っているような感じだ。
「そう、だね」
「わーお。敬語で喋った方がええですか?」
「いやいや、その必要はないよ。同じF組だし、気軽に接してくれると俺は助かるかな」
彼女の台詞一つで日本における小笠原家の立ち位置が明確になる。それでも彼女が立場を気遣いつつも臆しないのは、鈴山遥もまた名門の出であるからであろう。
亮太の認識では、鈴山は関西の名門一家。始祖一族ではないがこの二十年近くで急速に力を強めてきた魔法師一族の一つだ。
問題はどうして関西出身の彼女が大阪校に通わず東京に居るのか。名門一家でありながら入試で結果を残せなかったことに原因がありそうだが、彼女の性格を掴めていない状態で触れるのはまずいと思い、心の中に留めた。
「せやったら、このままでいかせてもらうわ」
鈴山は笑顔で言うと彼女を中心に話を続けた。それから指定時間まできっちり、割と静かな教室の中、鈴山は話題の提供を止めることなく口を動かしていた。
その間、亮太は相槌を打って、清水は少年を探るような視線を送りながらほとんど黙っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます