ひろし、決戦を観戦する
『なんと~!! これは予想外です! 賢者が一瞬で脱落しました! さすがベテランクラス。協力すると怖いです!』
アナウンスが流れると、イリューシュは弓を構え直した。
すると騎士の一人が大きな盾を前に構えてイリューシュに突進してきた。
「おぉりゃぁあああ!」
ガンッ!
「?」
「ふふふ」
騎士はイリューシュを叩きつけたつもりだったが、なんとイリューシュが盾を踏み台にして騎士の頭上に飛び上がっていた。
イリューシュは空中で美しく体を反転させると下にいる騎士に弓を引き絞り、上を
ヒュッ、ドッ!
イリューシュの矢は騎士の
『おおっと! イリューシュさん、美しい体さばきでヘッドショットを決めた~!』
「「「わーーーー!」」」
アナウンスが流れると、今度は間髪入れずに
「覚悟しろ!」
ビュッ!
ガンッ
イリューシュは槍の騎士の突きを弓で払うと、素早く矢をつがえて槍の騎士へ放った。
ヒュッ……、カンッ!
それを見た槍の騎士は慌てて槍を回転させて矢を弾き、槍を構えなおした瞬間、
ドッ、ドッ!
遠くから他の弓使いが放った矢が2本、槍の騎士の頭と胸を射抜いた。
「うっ! だっ、誰だ!」
槍の騎士が思わずイリューシュから視線を
ドッ! ……ドッ!
イリューシュの矢は正確にヘッドショットを決め、さらに追い打ちをかけるように他の弓使いの放った矢が命中すると、槍の騎士は消滅していった。
『おぉっと! 弓使いの連携だ~! あっ!!』
アナウンスが驚くと、両手剣の騎士と魔術武闘家が同時に弓使いたちに襲いかかった。
ズバッ! ドスッ!
不意を突かれた弓使いたち2人は静かに消滅していった。
「「「わーーーー!」」」
『何ということだ~! これだからベテランクラスは予測不能だ!』
この時点で、イリューシュと魔術武闘家、そして両手剣の騎士の3人になっていた。
『さて~、とうとうベスト3の戦いとなりました。これは楽しみです!』
「「「わーーーー!」」」
3人は一旦距離をとると、
イリューシュは弓を調整して射程距離を短くする代わりに弓の威力を上げた。
両手剣の騎士は着火剤を取り出して剣に振りかけると、剣に炎を
魔術武闘家はナックルとレガースを重いものに変更してダメージ稼ぐ戦法に出た。
3人は準備を終えると、騎士は両手剣を前に立てて一礼した。
魔術武闘家は右手を拳、左手を掌にして合わせて一礼した。
イリューシュは片膝をついて右手を胸に当てて
『すばらしい! 3人ともお互いに敬意を表して挨拶をしています!』
パチパチパチパチパチ
会場から拍手が巻き起こると、3人はゆっくりと戦闘態勢に入った。
魔術武闘家は両手剣の騎士に走り込み、低い体勢からボディーブローを放った。
ブワッ……、ガン!
しかし両手剣の騎士は剣の柄の部分でボディーブローを叩き落とすと、素早く横に一回転して水平斬りを放った。
ブンッ! バッ!
魔術武闘家は咄嗟に後方宙返りで剣をよけたが、イリューシュの放った矢が魔術武闘家の頭へ目掛けて飛んできていた。
ヒュッ……、パンッ!
魔術武闘家は慌ててイリューシュの矢を拳で弾いたが、そのスキを見逃さなかった両手剣の騎士は、魔術武闘家にタックルで襲い掛かった。
ガンッ!
「くっ!」
ズシャァアアア
魔術武闘家は予想外の攻撃に吹き飛ばされてバランスを崩し、仰向けに倒れた。
そこへ両手剣の騎士は走り込んで剣を大きく振りかぶると、豪快に一気に振り下ろした。
「うぉぉおおおお!!」
ブンッ!!
ヒュッ ヒュッ!
しかしその時、イリューシュの放った矢が2本とも騎士の
ガンッ!
「はいぃっ!!」
その一瞬を見逃さなかった魔術武闘家は、気合もろとも騎士の頭を抱え込んで
ドガンッ!
「ぐあっ!」
ヒュッ……、ガンッ!
さらにイリューシュの放った矢が騎士の頭を射抜くと、とどめに魔術武闘家が
「うりゃぁぁあああ!」
ドガンッ!
ズシャァアアア……
両手剣の騎士は吹き飛び、そのまま消滅していった。
「「「わーーーー!」」」
『さすがはベスト3! 一瞬たりとも気が抜けない戦いだー!』
イリューシュは弓を構え直すと、ゆっくりと回り込むように横に歩きながら魔術武闘家を狙った。
それを見た魔術武闘家はニヤリと笑いながら大呪文の詠唱を始めた。
「全てを焼き尽くす魔神よ、我はその破壊の炎を欲する者。強く揺るがぬ力をもって嘆願する。我に灰塵に帰す力を与えたまえ!」
ゴォォオオオオ!
すると魔術武闘家の目の前から大きな炎の
ヒュッ ヒュッ
イリューシュは炎の死角に入った瞬間に空へ向けて矢を2本放って
ボワッ!!
「うっ!」
ズザァアア……
しかし、完全には避けきれずに吹き飛ばされ、ダメージを食らってしまった。
魔術武闘家はそれを見ると次の詠唱を唱え始めた。
「全てを焼き尽くす……」
ドッ! ドッ!
「ぐっ!」
なんとその時、魔術武闘家の肩にイリューシュが空に放っていた矢が2本とも命中した。
イリューシュが矢を放っていたのが見えていなかった魔術武闘家は、肩の矢を抜きながらイリューシュに話した。
「さすがです。あの死角に入ったときに放ったのですね」
イリューシュはその言葉に落ち着いて弓を構えなおすと笑った。
「ふふふ。ええ」
イリューシュの笑顔に魔術武闘家は息を整えて静かに腰を低く落とすと、低い姿勢からイリューシュへ向かって走り出した。
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