ひろし、観戦する
騎士は杖を構えるめぐを見て、笑いながら言い放った。
「このレアな
「ふぅん。じゃあ、これはどうかな?」
めぐはそう言うと、油の
ガシャン! ガシャン!
すると騎士の両足の下は油まみれになり、意表を突かれた騎士は下がろうとして滑って転んだ。
そこへめぐは、さらに2つ油の瓶を投げつけた。
ガシャン! ガシャン!
「うっ、くそっ!」
ズルッ……、ズルズルズル……
騎士は滑り続けて全く立ち上がれなくなり、剣まで落としてしまった。
カラーン……
「あとは、後ろの人にお願いしますね」
めぐにそう言われた騎士が振り返ると、後ろには
それを見た騎士は慌てて叫んだ。
「ま、待って! 待ってくれ!」
ガン! ガン! ガン!
「ぐわぁぁぁ!」
しかし
「見事な戦法でした。まだアイテムはありそうですね」
「まだありますよ。試してみますか?」
「ふっ。これは用心しなければなりませんね」
するとその時、アナウンスが流れた。
『さぁ~、ミドルクラスもベスト8まで来ました! みなさん、一旦戦闘を止めてください。ここで恒例の闘技場へ転移しますよー!』
アナウンスが終わると8人のプレイヤーたちは闘技場へと転移した。
◆
「「「わーーーー!」」」
8人のプレイヤーたちは、それぞれ離れて円を描くように闘技場に立っていた。
ベスト8のプレイヤーたちは騎士が4人、魔法使いがめぐを含めて2人、あとは武闘家と珍しい無職の女性だった。
高校生くらいに見える無職の女性は、身につけている柔道着の帯を締め直してストレッチを始めると、会場に試合開始のアナウンスが流れた。
『さぁ、決勝バトルをはじめますよー! では~……、試合開始!』
プァァアアア!
試合開始と共に、4人の騎士が一斉に無職の女性に襲い掛かった。
「でやっ!」
「おりゃあ!」
「ふんっ!」
「でいっ!」
しかし無職の女性はテンポ良く全ての攻撃をかわしていき、最後の騎士が斬りかかってきた瞬間、声をあげながら一気に
「やぁっ!」
ブワッ!
そしてなんと、相手の斬りかかってきた勢いを利用して美しい一本背負いを決めた。
ズバン!
さらに無職の女性は倒れた騎士の腕に両手でしがみつくと勢いよく腕を反らせた。
ググググッ!
「ぐあっ!!」
すると騎士は
無職の女性は、騎士が落とした剣を投げ捨てて素早く離れると、それを見た他の騎士が素手になった騎士に次々と襲いかかった。
ズバッ! ドスッ!
「グワァァッ!」
「はっはー! 悪く思うなよ!」
「HPが少ないヤツから始末だ」
「1人でも減ると有利だからな!」
「「「わーーーー!」」」
騎士たちの同士討ちに大歓声が上がる頃、めぐは男性の魔法使いと一騎打ちになっていた。
しかし、お互いに詠唱に時間がかかる大呪文は避け、小呪文を小出しにしては避ける状況が続いていた。
そこで、めぐは思い切って大呪文の詠唱を始めると、驚いた男性魔法使いも急いで大呪文の詠唱を始めた。
するとそれを見ためぐは、詠唱をしながら毒の粉を投げつけた。
ブワッ
「うわっ! ゲホッ、ゲホッ!」
毒の粉は男性魔法使いに当たり、それを吸い込んだ男性魔法使いは咳き込んでしまって詠唱が出来なくなった。
パンッ! ガガガーン!
めぐはその
◆
めぐが魔法使いを倒すと残りは、めぐ、女性の無職、斧槍の騎士、武闘家の4人になっていた。
めぐは初めてベスト4に残って緊張していると、急に女性の無職が走ってめぐに近づいてきた。
それに気づいためぐは杖を構えると、
シュッ バチッ!
「え?」
無職の女性は素早くめぐに石を当てて気を
「きゃっ!」
バタン!
カラン……
めぐは急な出来事に杖を手から離してしまった。
そして、負けを確信しためぐは目に涙を浮かべながら空を
それを見た無職の女性はめぐの悲しそうな表情に驚いて素早く離れると、めぐに話しかけた。
「ご、ごめんよ。でも……」
ガン!!
しかし、その言葉を
めぐは時計台にリスポーンした。
めぐは、しばらく呆然としてから地面にへたり込むと、
「……、うっ……。うっ……。あーーー! くやしいよぉぉ! もう少しでー!」
それを聞いたおじいさんは急いで走ってきてめぐを抱きしめると、黙って頭を
「「「おぉーーー!」」」
会場からどよめきが上がると、画面では無職の女性が武闘家を
そして試合会場に女性の無職と斧槍の騎士が残ると、なんと無職の女性は急に自分で脱落した。
『おおっとぉ! 脱落だーー! サプライズーー!』
ブゥゥン……
自ら脱落した女性の無職は時計台の前にリスポーンしてくると、なんと、めぐのところに走ってきて土下座しながら言った。
「ごめんね! あの状況だと君を狙うしかなかったんだ! ほんとうにごめん! あんな顔されたらさぁ、もう気になっちゃって脱落してきちゃったよ」
めぐは一生懸命に
するとそれを見た無職の女性も笑顔になって立ち上がり、めぐに言った。
「ねぇ、あたしアカネっていうんだ。良かったら仲良くしてくれないかな」
それを聞いためぐは笑顔で
『ミドルクラスは脱落による優勝決定となりました! 結果発表になります!』
大画面に試合結果が表示された。
ーーーーーーーーーーーーー
ミドルクラス
優勝300点:ユーデクス
二位200点:アカネ
三位100点:鉄拳
ーーーーーーーーーーーーー
『そして、現在の上位5チームです!』
ーーーーーーーーーーーーー
一位:To The Top 400点
二位:てんてんと仲間たち 300点
二位:不屈の戦士 300点
四位:チームめぐ 100点
四位:武闘家倶楽部 100点
ーーーーーーーーーーーーー
「「「わーーーー!」」」
すると、アカネのところへアカネが所属しているチーム「To The Top」のメンバーがやって来た。
「おいアカネ、お前ふざけんなよ! なに自分で脱落してんの? ラインハルトも怒ってんぞ」
それを聞いたアカネが言い返した。
「はぁ、あんた何様のつもり? だいたい、あんただって始まってすぐ脱落してたじゃん」
「そ、それは関係ないだろ……、チームを裏切るのかって話だろ」
「あたしはイベントで勝つ事なんかより、人の気持ちのほうが大切なんだよ」
「気持ち? はぁ? ゲームの世界で勝たなくてどうすんの? ゲームやめれば?」
「はあ? そんなのあたしの勝手でしょ? そんなに文句言うなら今度はあんたの敵になってぶん投げるよ?」
「や……、やれるもんなら、やってみろよ……。お前、あとでフレンド切るからな。いいのか!?」
「いつでもどうぞ。じゃあ、今度は敵になってイベントで待ってるよ。じゃな」
アカネのチームメンバーはそれを聞くと、少し怯えながら去って行った。
すると、アカネにめぐからフレンド申請が届いた。
「え? フレンド申請? ってか、あんたあたしにフレンド申請くれたの?」
「うん。アカネさんかっこいいね」
「え、まじで!? ありがとうーー! よろしくねーー!」
アカネは急に泣き出すと、めぐを強く抱きしめた。
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