第10話 はっぴばー

 アベルも加わって料理を運び、3人が共に食卓についたタイミングで。


「「「いただきます!!」」」


「うまっ!!」


 アベルが真っ先にローストチキンに手をつける。


「これどうやって作るの!?」


「まず鶏肉を——」


「あっ、俺料理できないや」


「おい」



 その様子を見て、ソフィアもチキンに手をつける。


「はむっ」

「——っ!」


 一口かじった瞬間、ソフィアの目が輝く。


 脚をパタパタさせるソフィアを眺めながら、フレッドはサラダをもしゃもしゃと食べる。おいしい。



   .                 ❇︎                 .



 豪華な料理もほとんどを食べ切った頃合い。

 アベルがなにやら荷物を持ち出して——


「誕生日おめでとう、アル!」


 …


 ……


 ………


「「ええっ!?」」


「フレッド、今日誕生日だったんですか!?」


「忘れてた……」


「えっ、誕生日祝いでこの料理じゃなかったんだ!?」


「自分の誕生日は忘れちゃダメですよ!」


「お誕生日おめでとうございますっ!」

「ふぉゎがっ!?」


 ソフィアがだしぬけに腰を浮かせて、最後に残っていたローストチキンをフレッドの口に突っ込む。


「ふぁんふぇふぃふぃんふふぃふぃふっふぉんふぁふぉ!?(なんでチキン口に突っ込んだの!?)」


「……、プレゼント……??」


「ダメだこれ本人もわかってない!!」


「なんで伝わったんだよ今の言葉」





 カオスな状況がひとまず静まって、もぐもぐごっくんチキンを食べ終えたフレッドに、アベルが口を開く。


「えっと……言うタイミング逃したけど、『そんなアルにケーキのプレゼント!』」


 芝居がかった仕草でアベルが掲げたカゴには、小麦粉果物植物などが入っている。先程店でこっそり購入闇取引した品である。

 なにより、そのてっぺんに載っているのはなんとサンドロップで、よもやこのための依頼だったのかと——


「なぜに原材料」


「だって俺料理できないもん」


「俺に作れと」


「いぇす」


「チッ」


「あっ、舌打ちした、舌打ちしたーー!!」



「仲がいいんですねぇ……」


 1人ほわほわとしている聖女様ソフィアをよそに、アベルとフレッドは騒ぎ続けるのだった。

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