第5話 太陽は空高く

「山頂……到達!!、です」


 勢いよく到達宣言をした後、キュ〜、としぼむようにして掲げていた両腕を下げ、岩にストン、と腰掛ける。

 そんなソフィアに続いて、フレッドも山頂の目印に手をのせた。


 ——サンドロップ探索隊、山登り達成。


「なにか忘れてるような……」


「うわぁ、景色が綺麗ですよ!」


 ぽりぽりと頭をかいたフレッドだが、隣から聞こえてきた歓声に顔をあげる。



 まず目に飛び込んできたのは、…、……、、、


「いづっ」


 太陽の光を直視し、一時目を閉じる。仕切り直してもう一度目を開けると——


「ぁ゛ァ゛ッ゛」


 虫が目に飛び込んできた。なんだろう、なんか超常的存在の意志を感じる。妨害の仕方雑だな。


 必死に瞬きして虫を取り除いて、再び顔を上げ——

 あれ、何も見えない。目、開いてるのに。え、今の虫で視力飛んだかな。嘘——


「だーれだっ」


「言うの遅くないっ!?」


 顔に手をやってようやく安心。ソフィアの目隠しである。


「なにかブツブツ言っていたので、ちょっと面白くて」


「声漏れてたし」


「それで、誰でしょう?」


「……メアリー?」


「誰ですかそれっ!?」


 ようやく目隠しが外れ、背後のソフィアを振り返る。


「楽しそうだったので、陽の光と虫さんに便乗してみました」


 ふふっ、と微笑むソフィアの顔。ああ、景色よりもいいものを見れたと——

 ……いい話にまとめるのも無理あるな。


 ソフィアを急襲して、意趣返しにほっぺたを引っ張ってみるフレッドだった。



「……引っ張り方が控えめなあたり、フレッドはやっぱりフレッドですよね」


「一言余計!」


「うわぁぁぁ……!」




 ▷ ▶︎ ◢◣ ◀︎ ◁




「フレッドの料理は冷めても美味しいですね〜……」


 いつのまにかお弁当をつついているソフィアをよそに、フレッドはようやく山頂からの景色を拝む。


 青々と木々を茂らせてそびえる山々と、それにせき止められるようにして地平線まで広がる広大な平原。

 どこまでも広がる平原を、一筋の道が左右に隔てる。


 生憎あいにくと、今は日の出でも日没の時間でもないが、これはなかなか——


「絶景、ですね」

「最高の景色だ」

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