第4話 ポンコツだらけのこの世界

 片やほとんど2人分の荷物。片や何が入っているのかわからないパンパンのリュックサック。フル装備の2人は、山道へ足を踏み入れる。


 山菜探しとはいえ、あまり道から外れてしまっては無事に帰れる気がしない。遭難する自信たっぷり。


「だから、あんまり道から離れすぎないようにね」


「はいっ!隊長!」


「隊長入れ替わってる!?」



 ソフィアが小声で口ずさむ歌を片耳に、山道を歩く。


「もーいーくつねーるーとー、おーしょーうーがーつ——」


「301日」


 ボソッ。






  ❁   ❀   ✿   ✾   ❁⃘*.゜






 山を登れば危険はたくさん。例えば、急斜面とか。


「あっ……」


「スタァァァァァップ!!」


 転がり落ちそうになったソフィアを、下に居たフレッドが担ぐような形でキャッチ。フレッドの過保護が功を奏した瞬間である。


「って荷物重っ!?」


 そしてジャーマンスープレックス。


「痛ぁっ!?」


「わぁぁごめんっ!?」


 フレッドの過保護をソフィアの謎準備が押しつぶし、なかなかにカオスな現場が誕生した。





 ❁   ❀   ✿   ✾  ❁¨̮




 とまれかくまれ。ふたりは、生い茂る木々の隙間に日向ひなたを探しては駆け寄って、草をかき分ける。


 そんな作業が続いて数時間。


「ひぃ、はぁ…… つかれ、まし、たぁ」


「……あとちょっとで、山頂、だから……」


 フツーに山頂を目指す二人であった。馬鹿なの?ねえ。



 山を本格的に登ろうとせず、ふもとあたりを歩き回るのが常道の山菜探し。だというのに、本気ガチの登山をしている抜けた二人。もはや山菜探しのことも忘れてるんじゃなかろうか。



 そんなふたりの前に、なんと川が現れる。道間違えたね。なんなんだろうね。このふたり。


「引き返すしかないかな…… ん?」


 フレッドが頭を掻いて後ろを振り返ると、ソフィアが何やらリュックサックをごそごそと掘り返している。……掘り返している。だから色々入れすぎだって。何これ。


「こんな事もあろうかと、空気で膨らますボートを用意してきました!」


「……空気入れは」


「……、息で……?」


「ついでに言えばオールは?」


「……引き返しましょうか」


「……引き返そうか」





————————————————————————————————————



【茶番】

ソフィア「ビニールボートです!」

フレッド「時代設定!?」

ソフィア「ここチキューじゃないですし、田舎ですし」

ソフィア「時間なんてとっくに超越したとこにいるんですよ私たちはもう」

フレッド「キャラ……?」

ソフィア「カタコトでしか話せない病気にでもなったんですかあなたは」

フレッド「キャラぁ………」

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