第48話 不撓不屈
もうほとんど夏と言っていいほどの暑さを寝不足の全身で受けながら中間テストの朝が始まった。
朝ごはんとしてブドウ糖を取れるラムネと水だけを摂取し、眠い目を擦りながら気合を入れ直す。
家を出る前に先輩たちから教わったことを昨日一日もう一度叩き直し、簡単には間違えないはずだ。
一問たりともケアレスミスをすることは許されない。
家を出てから幼馴染と一言も話さず学校へ登校する、一字一句覚えたことを忘れないためだ。
教室の席でも誰も近づかせないオーラを纏い、一秒でも長く参考書を見て最後の悪足搔きをする。
こんな事をやったって対して点数が上がらないことは知っている、しかし体が何か覚えろと、脳を動かせと言って聞かないのだ。
試験監督の教員がゆっくりとテスト用紙を配る、忘れないためにメモを取りたい手を必死に抑えて、開始の合図を待つ。
教室中に緊張と焦りの入り混じる空気が流れる。
テスト用紙の注意書きをよく読む、最後の項目に「良く深呼吸をして、酸素を取り込むように」と書かれていた。
読み終えると教員が開始を伝える。
合図を聞き取るとともに、問題文を読み、間違えないように回答を始める。
一問たりともケアレスミスをすることは許されない。
睡眠が足りていないはずなのにアドレナリンがドバドバ出ているからか一切眠気が来ない。
これは行ける。
指から躊躇なく回答が出てくる。
ドSな先輩にいじめ抜かれた成果が確実に回答に現れている。
満点を取れるかもしれない、凉に勝てるかもしれない。
高鳴る鼓動を抑えながら、一度問題を解き終えた。
いや、まだだここで慢心しては行けない、僕は天川先輩とのミニテストで何を学んだんだ、見直しの重要性だ。
一問ミスをしてしまったらこのチャンスが台無しだ、今ならまだ見直して直すことが出来る。回答をもう一度解き直す。ミスを見つけて修正を繰り返し恐らく完璧な回答を作り上げられた。
喜びの表情を抑えながら回答を提出する、ニヤニヤを必死に抑えている顔は周りの人間には不気味に思われているだろう。しかし、この嬉しさを止めるにはこの表情をするしかないのだ。
クラス内は阿鼻叫喚としている物や、安堵の表情を浮かべている物、自主採点に似たことをしている生徒で別れていた。
「秀何かいいことあった?」
どの生徒にも属さない凉が特にテストなどなかったかのように声をかけてくる。
「いい感じに問題が解けてさ、凉はどうだった?」
「いつも通り」
満点という事だろう、それが彼女のいつも通り。
僕たちとは基本的なスペックが違う。
でも、それでも僕は諦められない、だって今回は手伝ってくれた人が沢山いるのだから。
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