第45話 ノーミス完了!

「終わったー」

「秀、よくやったわね、今日はもう寝ていいわよ」

「天川先輩ありがとうございます!おやすみなさい!」

 先輩の唐突な思い付きで開催された、ノーミスでテスト出来るまで寝てはいけないゲームという名前の通り、出された問題に対してノーミスで先輩が即興で作ったミニテストの回答をするゲームをやらされていた。

 眠い目を擦りながら何回もやった結果ようやくクリアすることに成功する。


 深夜十一時半を過ぎたころ辺りからやり始めて、凉が一発クリア常世くんが2回目と軽々とクリアしていく中僕だけが深夜1時半つまり2時間近くやり続けてようやくとクリアできた。


 途中まで気を使って一緒に勉強をしていてくれた常世くんは気が付いた時にはいなくなっていた。

 野次なのか応援なのか分からない、そわそわとした視線を送り続けていた凉も部屋の隅っこで静かに寝息を立てている。


「凉、良く寝てるわね」

「そうですね」

「ねぇ秀、あなたはなんでそこまで勉強熱心になれるの? 普通もう少し手前で諦めてたり妥協したりしてるわよ」

 確かに妥協していい場面は多かった、もう少し前から許されてもよかっただろう。

「なんでですかね」

「こら、先輩に隠し事しないの」

 コツンと頭を叩かれ、下を向いていた顔を先輩の方へと向け直す。


「超えたい相手がいるからですよ」

 今まで意図的に口にしてこなかった事を初めて自らの意志で口にした。


「ふーん、それだけなの?」

「勉強をしている自分がそれなりに好きっていうのはありますけど、やっぱり超えたい相手がいるっていうのが強いです」

「あなた変わってるわね」

 先輩はあえて踏み込まないように、優しさを持った言葉を僕にかけてくる。


「俺、色々な人に認められたいんですよ」

 本音という蛇口が深夜だからか壊れて戻らない。


「あなたは十分頑張っているわよ、私が保証してあげる」

 素晴らしいセリフだったり、彼女にしか言えない言葉をかけてもらったわけでもない。でもなぜかそのセリフは心に深く染みこんでいく。


「私がこんな時間まで起きてて勉強を見てて上げたんだから本番は一位取らないと承知しないわよ、だから秀頑張りなさい」

 少し潤いかけた視界で先輩の方を見る、いつものように凛々しく潤しさで体を包んで入るもののやたらと疲れているように見えた。


 そうだよな、僕だけが疲れているつもりだったが先輩は問題を作り、採点をして解説までやる。これがどこまで大変な事なのか想像をすると本当に頭が上がらない。


 明日に向けて睡眠をとろうと席を立つと天川先輩に呼び止められる。二人だけしか起きてない静かな部屋ではその言葉を無視することはとても出来なかった。


「そうだ聞きたかったんだけど、あなた達、なんで付き合わないの?」

 

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