第43話 ちっちゃい先輩の襲来

4月29日

今日が終わってしまった、また二日間も常世くんと会えなくなるのかと思うととてもゆううつだ。


4月30日

つまらない、はやくあしたになればいい


5月1日

彼への気持ちが止まらない、どうすれば私はもっと仲良くなれるんだろう。

明日から月曜日頑張ろう


5月2日

常世くんに話しかけてもらえた、一緒に本を読んだ、彼は普段本を読まないらしく私におすすめされた本を今日から読み始めるらしい。

会話ができてうれしい、明日感想聞かせてくれるといいな


5月3日

常世くんと遊ぼうを教室に出るとクラスの子に止められた、常世くんを独り占めしているのが彼女たちはとても嫌らしい。

私なんかと一緒に居たらやっぱり常世くんにも悪いうわさが出来ちゃうのかな…

常世くんと今日は話せなかった、でも本当はそれでいいのかもしれない。


5月4日

常世くんから逃げていたら彼に捕まって怒られた、私だって本当は悔しくて苦しいけど彼のためなら私がいなくなるのが一番なんだ。


 目の前にいる先輩は小さい頃どれだけかっこよかったのだろうか、今でもそれなりにカッコいいが誰からも嫉妬されてモテまくりという訳ではないはずだ。


 日記を見ながら彼の表情を伺ってみると、何かむずがゆそうな顔をしていて、何か記憶を辿っているようだった。


「この頃の僕結構色々な子から好かれてるんだな」

「自慢ですか?」

「いや、今と比較して少しだけ悲しくなってくる」

「天川先輩がいるからいいじゃないですか」

「男はハーレムを作ってなんぼでしょ」

 冗談交じりで言われたその声は心底楽しそうだった。


「へぇ、圭はハーレムが作りたいんだ、人の日記まで盗み見て感想がハーレムなんだ」

 先程まで感じなかった気配が後ろから殺気として現れた。

 怖くて振り返れない僕と常世くんの横をすたすたとさっきの持ち主が歩いて日記を回収する。


「何か言ったらどう?」

「あの、その」

「なに?」

 トーンは明るいが、根底にある明度というものはとても漆黒が凝縮されたようなそんな声をしている。

「ごめんなさい」

「それで?」

「許してほしいです」

「ふーん、許してほしいんだ、私の大切な私物を勝手に盗み見て、謝った程度で許してほしいんだ」


「すみませんでした」

 常世くんと、怒られる時は一緒に怒られると約束した。だから僕も先輩たちの会話に割り込むように僕も謝罪の言葉を誠意を込めて述べる。


「あら、秀はいいのよ、どうせこの男に誘われたからだろうし断れなくてもしょうがないのよ」

 ダメだった、僕だけ許されて一緒に怒られることをドSな先輩は許してすらくれない、それにより常世くんを結果的に裏切る選択肢しか出来なくさせられてしまう。


「じゃあ、圭後で私に対する誠意しっかりと見せなさいね」

 天川先輩はノートを回収して、再び飛び切りの笑顔で常世くんに対して言い放つ。

「あ、まだここまでしか読んでいないのね」

 その後開かれたノートを見た先輩はボソッとそんな言葉を言った。


「まずいことになったな」

 常世くんのその言葉が今度は謝罪をするための会議の始まりとなるのだった。

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