第39話 クローゼットの中には秘密が隠されている
「秀と圭もっと食べたいでしょ?マフィン」
自信満々に先輩は言ってくる。
「ありがたいんですけど、お腹いっぱいで」
「愛咲悪いけど、僕も…」
「圭はもっと食べるでしょ、大丈夫ちゃんと分かってるから」
上機嫌な天川先輩はそのまま、部屋を軽い足取りで出ていった。
「鷺ノ宮君」
「なんですか?」
「助けて」
「先輩無理です、自分には先輩を救えません」
「頼む君しかないないんだよ、愛咲の小さい頃の写真見せてあげるから」
「前先輩に聞いた、上品でドSじゃない時代の天川先輩ですか?」
「そうそう」
それは気になる。
「後で、じゃあ一口貰うで手を打ちませんか?」
「二口だ」
「了解です」
謎の取引が成立し、先輩が席を立つ。「ガチャ」という音とともに部屋の端のクローゼットのを開けた。
「確かここにアルバムがあったはず。あ……。」
「先輩そんな所で立ち尽くしてどうしたんですか?」
「いや、なんでも」
机から顔を上げて先輩の方を見ると明らかに、汗の吹き出し方が不自然だ。
「先輩本当にどうしたんですか?」
「いや、本当に何でもない」
何を隠してるんだ、隠されると知りたくなるのが人間の性だ。めちゃくちゃ知りたい、あの常世先輩が隠したがっているものとは何だ?
「勿体ぶってないで教えてくださいよ~」
「ほら、鷺ノ宮君勉強はいいのかい?」
先輩は上ずった高い声で答えた。
「気になって勉強が手に付きません、三口食べますから」
そういって無理やり先輩を押しのけるように中を無理やり盗み見る。
目の前に入ってきた光景に一度目を疑った、一枚や二枚じゃなく、クローゼットの壁一面に常世先輩の写真が貼られていたのだ。中には明らかに盗撮されているようなものもある。
開いた口が塞がらない、声を発しようとしても何を言っていいか分からず喉で詰まってしまう。
「鷺ノ宮君僕はどうしたらいいかな」
「先輩愛されてますね」
目を逸らしながら僕はそう述べる。
「愛咲の事なら大体わかってたと思ってたけど、全然分からない」
「愛咲ちゃんはやっぱり凄い」
凉が訳の分からないことで目を輝かせながら、写真のコレクションを見ている
確かにある意味凄いがこれは褒められるようなものではない。
「これは?」
凉が一面の写真の下に埋まっていたノートを取り出した、見る限りは普通のノートだ。
「僕もこのノート見たことないな」
自分の写真が一面に貼られているを光景を見たというのに、先輩は思ったよりも冷静に思えた。
「開けるぞ」
先輩が意を決したように、ノートに手をかける。
トン、トン、トン と廊下から近づいてくるような音が聞こえた。
「まずい、隠さなきゃ」
先輩はとっさに自分の鞄にノートをしまい、僕はクローゼットの扉を閉めて席に着く。
凉はというといつも通り何も気にしていないのか犬と戯れている。
「あら、圭なんか汗凄いわどうしたの?」
「急に筋トレしたくなっちゃってな、今インターバル中なんだ」
「私、座椅子に座りすぎて足が痛くなっちゃった。ちょうどいいわ、圭椅子になりなさい」
「はい」
その返事には哀愁が漂っている。
「はい、喜んででしょ」
「はい、喜んで」
戻ってきたドSな幼女は、楽しそうに椅子にそのままマフィンを食べさせ始めた。
さっきの写真たちを張った人物は本当に天川先輩なのだろうか。
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