第36話 女は成長するに連れて、横暴になる
ルンルンで犬と歩いている幼馴染に続くように歩く。
「先輩はなんで天川先輩と何年くらいの付き合いなんですか?」
「小学校低学年とかかな、出会った時の愛咲は可愛かったな、上品で大人しくて何をするにも僕の後を追っかけてきて」
「にわかには信じがたい話ですね」
「だろ」
「本当に信じられないっす」
「今は鷺ノ宮君も知ってる通り、横暴、ドS、僕の事を奴隷か何かと勘違いしているそんな子に成長したからな」
天川先輩に優しかった時代があったとは意外だ、確かに凉も昔と今とでは少しばかり性格が違う、女は成長していくにつれて性格が横暴だったり、わがままになったりするのだろうか。
そんなことを考えていると、幼馴染に頬っぺたをつままれる。
「秀、なんか失礼な事考えてた?」
「いや別に」
「ならいい」
女というのは成長するにつれ勘というのも成長していくのだろうか、昔は何か考えていてもこんな風にバレやしなかった。
「二人ともやっぱ仲がいいね」
「まあ、一応幼馴染ですからね」
「そう、私たちは幼馴染だから」
学校の校門付近にボブちゃんを繋ぎとめて、天川先輩の元へと向かう。
物思いにふけっている天川先輩に常世先輩が声をかけた。
「愛咲何かようか?」
「圭?どうしたの」
「あれ、君が僕の事を探してるって、鷺ノ宮君から聞いたけど」
「私が、探しているのは圭じゃないわ」
衝撃的な事実が天川先輩から告げられる。僕はもしかしたらとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
「なんか焦っているようだけどどうしたんだ?」
「圭落ち着いて聞いてほしいの、ぼぶが、ぼぶがいなくなったのよ」
あれ、もしかして天川先輩が探していた犬って、常世先輩の事じゃなくてぼぶちゃんの事なのか?
「ぼぶちゃんなら公園に居たところをさっき保護しておいたよ」
「圭、ほんとう?」
みるみる表情が変わっていく。
「もちろん本当だ」
「圭ありがとう!大好き」
天川先輩が常世先輩の胸に飛び込む、大きな体でもその勢いの凄い小さな体を支えるのは大変そうだ。
「ぼぶちゃんはすぐ逃げちゃうから、しっかりと門の戸締りしような」
「うん」
いつもの強気な天川先輩とは違い、その表情からはとても柔らかく、見た目通り幼い子供のようなあどけない笑顔をだった。
天川先輩はよほど焦っていたのか、落ち着くまで数十秒間常世先輩から離れようとしなかった。
「秀、やっぱり愛咲ちゃん達仲がいいね」
「そうだな」
「二人ともなんでそんなところに隠れているの?」
いつの間にか、離れていた天川先輩に教室の外から見ていたところを見つかってしまう。
「いやなんか入りずらい雰囲気で」
「あら、気を使ってくれていたの気が利くじゃない」
彼女はいつものような美しく謎に満ちた上品さを取り戻し、Sっ気の多いイントネーションでそんなことを言う。
「別に気にしなくてよかったのにな」
それを聞いた天川先輩は飼い犬の腹を軽く摘まんだ。
「まあいいわ、圭、それじゃぼぶのところまでエスコートしなさい」
「わかりましたよ、喜んで」
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