第29話 初対面のギャルはそこそこ怖い

 地面と上履きが擦り切れる音が徐々に近づいてくる。

 次の瞬間ガラガラっと教室の前のドアが開いた。染めたであろう落ちかけの金髪を持ちイヤリングを両耳に着けた少女がこちらを警戒するように近づいてくる。

 その生徒の後から来た先生はドアを閉めて目の前の女子生徒を席に着くように促した。


 ふてぶてしそうに彼女はそのまま僕と向かい合う形で席に着く。

「で、あんた何の用?」

 見た目だけでなく、口調もどこか荒々しい。まあ、ストーカーの被害者が加害者側の人間から話しかければそりゃ口調も荒くなるか。

「君が星崎さんであってる?」

「あってるから、早く用事を言って」

「ストーカー被害にあったって聞いて、本人に代わって弁明しようと思って」

「あんたは誰なの、あのストーカーとどういう関係?」

「鷺ノ宮です、一応同じクラスで菊池とはまあ友達かな」

「あんたが鷺ノ宮なの?まあいいや、それであのストーカーについて何の話があるの?」

 鋭い目つきで睨みながらこちらに質問を投げかけてくる。

 菊池がギャル怖いという理由が少しばかり分かる、ただこの程度で怯むわけにはいかない。


「具体的に何されたか教えて欲しい」

「は?なんで」

 星崎は心底困惑した表情を浮かべている。

「お願いします、教えてください」

 間髪入れずに頭を下げる。斜め45°の完璧なお辞儀だ。

「鷺ノ宮あんた結構キモイ、それだけ教えて欲しければ教えてあげるけど」

 そう言った後、彼女は先生を教室の外に退室させた。


 妙な緊張感が教室中に回る。

「あのストーカー男、私に何言ったと思う?」

「何言ったんだ?」

 知っているがあえて彼女から聞き出す、そこに意味がある。

「『何か困ったことないですかって?』あたしが困ってないことくらい見て分かるでしょ」

「それだけでストーカー扱いは酷くないか?」

「あたしはその後『俺カッコよく助けますよ』とかさっき見たいな、困ってますよねとかずっと聞いてきたの、チョーあり得ないもっとイケメンになってから言えっての」

「菊池と面識はあった?」

「知らないわよ、あんな男」

 冷たく吐かれたその言葉を聞き一呼吸置く。


「信じてもらえない話かもしれないんだが話を一応聞いてもらえないか」

「ちょっとだけなら、まあ」

 彼女はしぶしぶといった感じで了承をした。

「あいつは幼馴染が欲しいんだ」

「は?」

 困惑している星崎さんを置き去りにして僕は持ってきた「嘘」と「本当」を混ぜた話の披露を始める。


「菊池は馬鹿だがストーカーなんかじゃない」

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