第26話 クラスはストーカーがいたらしい
とりあえず朝の優雅な時間を崩されて少しだけムカついたので、無視を決め込むことにする。
「秀誰から?」
「菊池だよ、ラインが誰かって報告必要か?」
「必要、浮気対策」
「まず僕たち付き合ってないだろ」
「でも浮気はダメ」
「じゃあダメか」
いつものように僕の意見が折れ今日がまた始まっていく。
学校に着くと何やらいつもより教室が騒がしかった。
前の席に座っているクラスメイトから話を聞くと、クラスの男がストーカーまがいの行為をして女子からガチギレされたらしい。
全く高校生活が始まったばかりだというのに焦って馬鹿なことをする奴がいるもんだ。
前の男(名前は斎藤だったかな)からその事件の詳細な情報を聞くと犯人はどうやら体格のいい男、どうやら被害者に対して「困りごとはないですか?」「俺カッコよく助けますよ」などと訳の分からないことを何度も述べていたらしい。
「うちのクラスにそんな変な奴がいたのか」
「だよね、あと鷺ノ宮君ってもっと怖い感じの人かと思ってたよ」
「そう?こっちこそ斎藤君はももっと無口な人かと思ってたよ」
「僕は人見知りなだけだよ、よろしくね」
「ああ、よろしく」
新しい友人が出来ることは歓迎だがクラスメイトとの初めての会話がストーカーの男というのはどうなんだろうか。
「鷺ノ宮君と言えば鷹河さんだよね、あんな美人でミステリアスな人が彼女いるなんて羨ましいよ」
「あのな、僕たちは別に付き合ってるわけじゃ…」
「あ、鷺ノ宮君!おはよう聞いて聞いて」
会話に割り込むように元気よく登校してきた夏木さんが話しかけてくる。
「夏木さんおはよう、どうしたの?」
斎藤君に申し訳ないとジェスチャーで謝っておき、夏木さんとの会話に切り替える。
「菊池君がストーカーしたって聞いたんだけど何か知ってる?」
「噂のストーカー男は菊池だったのか、納得」
「なんでそんな冷静なの?」
「夏木さんは気が付いてないかもしれないけど、菊池は結構な馬鹿だ」
そして女子免疫が全くないあいつなら突拍子のない事をしてもおかしくはない。
「そうなの?」
「夏木さんの前でだいぶぼろを出さないように頑張ってたけどあいつはアホだ」
「菊池君がアホだっていうのは分かったけど、菊池君って一人でそんなことするかな?」
そうだ、菊池はチキンだった、誰かにそそのかされでもしない限りストーカーなど実行しない。
あ、思い出した、昨日菊池が幼馴染を作るとか突拍子のないアホなことを言って、そこに馬鹿と紙一重の僕の幼馴染が変なことを吹き込んでいたんだった。
「鷺ノ宮君大丈夫?顔色悪いよ」
「まあちょっと、菊池の事が心配で」
得意の息を吐くように、嘘を付く。
菊池は大人に対しては口がうまいから大丈夫だろう。
そう信じて菊池が生活指導室で僕の名前を出さないことを願った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます