第24話 覚えていないものは仕方がないはずだ

「幼馴染の扱い方なら私に任せて」

「でもな凉、幼馴染でもないやつを幼馴染にすることは難しいだろ」

「私が幼馴染の事を教える」

 前髪を分けながら自慢げに彼女はそう言い放つ。

「まず、幼馴染と上手くやるのは相手に主導権を取らせない事」

「なるほど」

「自分を好きにさせる事」

「菊池には無理だろ」

 可能な限り彼女から話題を逸らすように菊池の方を見た。


「酷いこと言うなよ、あと、扱い方じゃなくて出来れば幼馴染になる方法を教えて欲しいんだよね」

「まあ幼馴染って気が付いたときにはそこにいたからな」

「え」

「どうしたんだ凉」

 彼女がいつになく戸惑いうろたえている。

「秀忘れたの?」

「忘れたって何が?」

「もういい」

 いつにもなく強く言葉を吐いた彼女がどんどん悲しそうな顔になっていく。


「なに怒ってるんだ?」

「出会いを忘れるなんて酷い」

 出会いと言われてもそんな10年以上前のなんなら物心がついているかすら怪しい時のことを言っても困る。

「ごめん忘れてるっぽい」

「ほんとうに?」

「ごめん」

「酷い」

 謝ったことで声色は落ち着いたものの彼女は物悲しそうな顔を続けていた。

 この顔を見ていると徐々に心が痛くなってくる。

 しかし分からないのだから解決方法は時間を立たせるしかない、さてどうしたものか。


「二人とも俺のために争わないで」

 菊池が気を利かせたのか、冗談っぽくぶりっ子の真似をした。丁寧なことに手の振り付けまで完璧だ。

「それで、鷹河さん俺はどうすれば幼馴染を作ることが出来ると思う?」

「女の子をしっかり助けてあげる事」

 いつもストレートな物言いの彼女だがその言葉はいつもよりも真っすぐな気持ちがこもっているような気がする。

「なるほど、助けるか、星崎さんなにか困ってるのかな」

「なんでもいいから、困ってる子をかっこよく助けてあげる」

「分かった!頑張ってみる」

「私と秀に言ってくれれば、協力する」

「二人ともありがとう!」

 そう言って菊池はどこかへ去っていった、お調子者のあいつが暴走をせず、変なことをしなければ幼馴染になるというのは絶対に不可能でもいい感じの友達くらいにはなれるだろう。


「秀本当に忘れちゃったの?」

 帰り道を歩き、家に入る直前でそれまで無言だった凉が話しかけてくる。

「出会った時の話か?」

「そう」

「ごめんな、俺多分その頃まだ物心ついてないと思うんだ」

「でも、覚えててほしい」

「じゃあ頑張って思い出すことにするよ」

「うん」

 彼女は納得したのかそれまでの不服そうだった態度を改めて、家の中に戻っていった。


 凉との出会いの時はいつだっただろうか、彼女と出会った時期はそういえば彼女の誕生日の七月あたりだっただろうか。

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