第21話

「鷺ノ宮なんか顔色悪いぞ、次の時間体育だけど大丈夫か?」

「テスト前だからな、まあ多分大丈夫だろ」

「お前テストガチ勢だったか、元気が出るように俺がこの前ようやく完成させた学年のかわいい子リスト見せてやるよ」

 そういって菊池は一冊のノートを取り出した。

「いいのか、女子にばれたらお前嫌われるぞ」

「だから体育前の女子がいない時間なんじゃねえか」

「菊池お前意外と策士だな」

「学校一の切れ者と呼んでくれ」

 菊池は自慢気にノートを開き解説を始める。


「まず一人目容姿端麗、クオーターで顔のレベルがとにかく高い、背も高くクールな性格で気に入らない相手への対応はとにかく塩対応、告白の手紙を受け取って開けもせずにごみ箱に捨てる、もしくは見ていられないくらい酷い振り方をするらしい」

「誰だ?そんな奴いたっけ?」

「鷹河さんの事に決まってんだろ、寝不足なのかそれともボケてるのか?」

「凉は気に入らない相手には塩対応だけど、そんなにクールか?」

「幼馴染のお前がそういうなら違うのかもな。」


「じゃあ次は夏木さん、見た目はギャルっぽいが明るくコミュニケーション能力が高くそこそこ頭もいいらしい、運動は苦手らしく、甘いものに目がないらしい」

「運動苦手なのか意外だな」

「だよなー、あの見た目は絶対得意だと思ってた」

「人は見かけによらずだな」

 そんな会話をしていたら教室についているスピーカーから授業の五分前を伝える予冷が鳴る。

「二人だけしか紹介してないのにもう時間かよ、また次の体育前の時間に解説するわ」


 六限目の体育も難なく終わり、一日の学校は終わったがその後仕方なく勉強を始めた。

 しかし、一人の部屋で机に向かって勉強を続けていても全然頭に入ってこない。

 一度伸びをして気合を入れ直し、ヘッドホンを付けて外界の音を遮断する。そうやって机に向かう時間を頑張って増やしていく。

 しかし、思うように勉強は進まない。勉強を始める前に立てていた勉強計画のスケジュールがどんどんと狂っていく。

「これはキツイな」

「大丈夫?」

 一人だと思って独り言を呟いていたら凉の声が返ってきて、びっくりで椅子から転げ落ちる。

「秀びっくりしすぎ」

 彼女は邪悪な笑い方をしていた、もしかしたら驚くとわかっていて話しかけたのかもしれない。

「凉いるなら言ってくれよ」

 独り言を聞かれてしまっては恥ずかしい。

「次から言う」

「それでなんでいるんだ?」

「理由はない」

 テスト期間だから邪魔にならないようにこちらを見張っている。

 今回こそは生まれて初めてテスト勉強くらい勝ちたい。


「そういえば秀の携帯さっき鳴ってた」

 携帯を確認してみると、菊池から「遊びに行こうぜ」とのラインが来ていた。

「誰から?」

「菊池だよ、遊びに行こうって話だった」

「行くの?」

「まあ勉強するからいけないかな」

「本当に?」

「行かないってなんでそんなに疑うんだ?」

「最近秀が冷たい」

 ??????

 不満そうに言葉を零した彼女がこちらを見てくる。

「そんなに冷たいか?」

「冷たい」

「どこらへんが」

「私が来ても気が付かないし、この前菊池君と女の子の話してた」

 この前ということはどうやら今日の事はばれていないらしい。

 やっぱり菊池はリサーチが足りていない、ノートにあった凉はクールということは大外れだ。だってこんなにも感情豊かなのだから。

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