第18話


「あの人本当に高校生なのか?」

 遠くから天川先輩の姿を見た菊池が小声で聞いてくる。

「俺も最初は小学生だと思ったが、周りの反応や本人の話だとあれでも先輩らしい」

「まじか、噂通り高校生っぽく無さ半端ないな、俺の妹と体格変わらないぞ」

「ちなみに妹の年齢は?」

「小4」


 そんな会話をしていると凉がその間に天川先輩へ話しかけ始めた。

「あら、凉どうしたの、秀も一緒なのね?」

「私の友達が愛咲ちゃんに会いたいって」

「そっちの子たちかしら?」

「こんちわ!先輩の噂聞いて会いに来ました菊池です!」

「鷹河ちゃんと同じクラスの夏木ですよろしくお願いします」

 菊池は元気よく返事をして、その横で夏木は小さくお辞儀をしていた。


「元気がいいわね、それで、私に何の用?」

「私たち、学校の七不思議を探してるんです」

「それで、私に何か聞きたいことがあるの?」

「明らかに高校生じゃない生徒がいるって聞いて七不思議になってます」

「誰がそんな噂流したのかしら」

 むすっとした表情で先輩は答える。

 確かに体格だけで七不思議扱いはいい気持ちはしないだろう。


「まあこれでわかったかしら、七不思議なんてただの噂で適当な人が適当に付いた嘘なのよ」

「確かに先輩は目の前にいますし不思議というには物足りない気がしますね」

「それはそれで失礼な気もするけど、まあいいわ許してあげる」

「そういえば天川先輩今日は常世先輩と一緒じゃなかったんですね」

「圭は私が押し付けておいた宿題をしてるわ」

「先輩、もっと友人は優しく扱わなきゃダメなんですよ」

「犬は友達かしら?」

「友達と取る人もいますし家族と取る人もいますよね」

「それもそうね」

 やはりこの先輩はどこか不思議でつかめない、そして常世先輩が不順でしょうがない。


「愛咲ここにいたのか、宿題終わったぞ」

 噂をすれば影とはよく言ったもので不順の日本代表選手がこちらに向かってきた。

「圭思ったよりも早かったじゃない、私の代わりにこの子達に娯楽を提供してあげなさい」

「なるほど分かった」

 一瞬こちらを見た常世先輩は大体の事情を察したのかは分からないが、無理に納得するような素振りを見せた。

「早く娯楽を出しなさい」

「愛咲無茶言わないでくれ」

「そうだな、君たちは学園の七不思議的なものを知ってるかい?」

「言いにくいんですけど、私たちそれで天川先輩に話しかけたんです…」

「そっか明らかに高校生じゃない生徒っていう噂を聞いてきたのか」

「あの噂、常世先輩も知ってるんですね」

「何を隠そうあの話題を七不思議として面白半分で広めたのは僕だからな」

「何してんすか先輩」

「かなりむしゃくしゃしてやった」

 投げやりな表情を見ていると、本当にむしゃくしゃしてやった事なんだろう。


「ほかの七不思議って先輩知ってるんですか?」

 それまで空気に圧倒されていた菊池がいきなり声を発する。

「知らなそうな七不思議でそれなりに面白そうなやつか、消える手紙の話とか知ってるかい?」

 常世圭は先ほどの日常の温度を数度変えるような話を語りだした。

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