第16話

「私三階初めて来た!」

「一階は使っても上に行くことはないもんな」

 学校の東側がホームルームを主に行う教室、一階は昇降口や購買、職員室など大事そうな教室が固まっており、僕たち一年は二階、二年は三階、三年は四階となっている。

「なんか、こう来たことない所だとテンション上がるな」

「なんかわかる、ちょっと楽しいよね」

「それで、どうやって探すつもりなんだ?」


「「・・・」」二人から沈黙が返ってくる。

「ノープランかよ」

「待て鷺ノ宮、七不思議になるってレベルだから上級生の間じゃきっと常識レベルに知れ渡ってるってことだ」

「なるほど」

「つまり誰かに聞けば絶対分かる」

「やるね菊池君!」

「自分の足で探してこその七不思議じゃないのか?」

「細かいことを言っちゃいけないぜ、ほら、夏木さんなんてもう上級生に話しかけてるぞ」

 つい五秒前まで隣にいた夏木さんは上級生であろう人に颯爽とコミュニケーションをとっていた。

「早コミュ力高いな」

「彼女の座右の銘は善は急げらしい」

 なるほど、だからいつも何か動いているのか。


「七不思議さんって三組だって」

 彼女は上級生にお礼を言ってからこちらへと駆け寄ってきた。

「夏木さんおつかれ~三組にすぐ行こうぜ」

 足早に駆け抜けていく二人の後を凉と一緒にゆっくりと追いかける。

「二人とも楽しそう」

「そうだな」

「秀は楽しくない?」

「まあそれなりに楽しんでるよ、ちょっと七不思議さんには申し訳ないと思っているけど」

「そう」

 

「七不思議さん今いないみたい」

「まあ忙しい人なんだろ」

「やっぱり簡単には見つからないか、流石七不思議にラインナップされるだけはあるな!燃えてきた」

「何に燃えてるんだよ」

「私も絶対見つけたいな、四人でまた放課後チャレンジしに行こ!」

「おっけー、鷺ノ宮達も強制参加で」

 その後教室に戻り、急いで食べ残したお弁当を食べ、昼下がりの眠気と闘いながら授業を受けることになった。

 なんとか授業を乗り切り、ホームルームを終える。

「いやーなんで今週に限って理科室の掃除当番なんだよ」

「理科室掃除はやること多いよな、まあもうすぐ終わりなんだし気にすんなよ」

「女子二人はゴミ捨て行っちゃったし、男二人じゃやる気出ないよ」

「気持ちは分からないことはないな」

「流石俺の友達、今度俺的学年のかわいい子ランキングみたいなのまとめるから作ったら鷺ノ宮にも見せてやるよ」

「それは親友昇格も考えるな」

 手を動かしながら適当な返事をした。


「お前って鷹河さんがいないと女の話してくれるよな」

「そこは深く聞かないでくれ」

「分かった」

 菊池はにやにやしながらそう答えた。

「そろそろ掃除も終わるし、二人が戻ってきたら七不思議さん探しに行くか」

「お、やっと鷺ノ宮もやる気になってくれたか、早く七不思議さんの顔が見たいぜ」

 掃除を終わらせ、僕たちは二人が来るまでの時間を可愛い女の子という話題で楽しく語り合った。

 そういえば、これが僕の求めていた監視されない高校生活の一つだったな。

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