第9話 人のイメージとは昼と夜ではだいぶ違うという教訓
入学式で校長の長い話を半分くらい聞き、その後担任のありがたいお話を適当に流し、明日からの説明を聞いて高校生活一日目を終えた。
「意外と長かったな」
「つまんなかった」
「まあ入学式だしなぁ」
「話も長いし」
いつもハイテンションでご機嫌というわけではないが先ほどから彼女はどこか機嫌が悪い、入学式の話が長かったくらいでいつもは何か言う性格ではないはずだ。
「なんかあったのか?」
「さっきパパとママから連絡が来た」
「なんて?」
「入学式なんで呼んでくれなかったのって」
「それだけ?」
「さっき勝手にいた、今日うちに来るらしい」
つまり僕の家の隣に優しいが変わったおじさんとおばさんが来るということだ、今日は早めに寝ることにしよう。
「いいのか俺と帰ってて」
「いい」
凉はやや早歩きで僕の前を歩いて、不機嫌そうにそんなことを言う。
「おじさん達悲しんでるぞ」
「秀は私と帰りたくないの?」
彼女が振り返ってじっと目を見つめられる、色素が薄く見ていると吸い寄せられそうになってしまう、なぜかこの目寂しそうな眼を見ているとなぜだか彼女の言うことを聞かなければならない気がしてくる。
「まあ、うん」
彼女から目を逸らし、逃げるように適当な言葉を吐く。
「私と帰りたいんだ」
「家隣だからね」
彼女は機嫌を直したのか、歩くスピードを落とし僕の隣に着いた。
五分ほど緑道沿いを歩いていると目の端の方に変な人物が映る、小さな広場みたいな所で上裸になり死にそうな顔をしながらメガネの男が腕立て伏せをしていた、それだけなら町中にたまにある変な風景程度で片付くのだが、その男の背中に小さな女の子が物凄く幸せそうな顔をして乗っているのだ。
よくよく見てみていると女の子はその見た目とは似つかない口調の強い言葉を男に投げかけている。さらによくよく見てみるとその二人は数日ほど前小さな公園で見かけた人物たちだった。
話しかけられないよう下を向き、涼の陰に隠れてやり過ごそうとしたがその努力もむなしく、隣を通ろうとした瞬間「鷺ノ宮君じゃないか!」とそれまで死にかけていた男に気が付かれてしまう。
「こんにちは」
「あら、入学式の帰り?」
「はいそうです」
「鷺ノ宮くんまた会えてうれしいよ!」
「圭うるさい」
察するに常世先輩はどうやら本当に天川先輩の犬で天川先輩のことが好きらしい。
「そっちの可愛い子は?」
「私は鷹川涼、秀の幼馴染件飼い主です」
???どちらかというと彼女のことを世話をしているのは僕なはずだ。
「あなたって面白い子ね、気に入ったわ!」
同じ波長を持ったソウルメイトのようなものを見つけたかのようなテンションで天川先輩が涼に話しかける、人見知りなはずの涼もどこか楽しそうな顔をしている。
こっちもなぜか仲間を見つけたような目で常世先輩が見てくる、この前見たときは冗談の通じる面白く、破天荒な女の子の面倒を見ているカッコいい人というイメージが180°ひっくり返った。
僕は高校生活で頼れる先輩を見つけることができるのだろうか。
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