第8話 幼馴染パワーというのは凄いらしい
その後も凉に家事やその他多くの手伝いをしろと命令され、それを遂行していくうちに入学式の日がやってきた。
いつもより少し早めに起きて朝食の準備をしていると、玄関の方でガチャガチャと音が鳴る。
「秀おはよう、今日の朝ごはんなに?」
隣の部屋の住人が入ってきた。
「パンだけど」
彼女はそれを聞き満足そうに頷くとリビングの椅子へと腰を下ろした。
「出来たよ」
目玉焼きと焼いたトーストとコーヒーという作った簡単な朝食を彼女の前へ差し出す。すると彼女は机の端に置いておいたガムシロップをコーヒーに入れた。
僕も自分のも作り終わり、フライパンを適当にシンクの水につけて席に着いた所で彼女はいただきますを言って食事を初めた。
「おいしいか?」一度もまずいと言われたことはないはないが毎回こんな質問をしてしまう。
「おいしい」
「高校って勉強むずいのかな、楽しいといいな」
「難しい?ってどんな感じなんだろう」朝食を食べる手を止め、凉が質問をする。
「まあ、そうだな。凉には多分関係ない事だよ」
「そう」
凉は小さく返事をすると、どこか退屈そうな顔をして、また朝食を食べ始めた。
隣人が一度自分の家に戻ったタイミングで、朝のルーティーンを少し家を少し丁寧にやり、制服に裾を通す。まだ体に馴染んでいないその服は着心地がいいものではなかったが、着ていると新しい生活を実感させてくれるからか不思議とテンションが上がる。
入念に準備を済まして玄関の扉を開く、すると目の前には幼馴染が立っていた。
「行くか」
「うん」
それだけの会話をして学校への道を歩き始める、本当なら期待や緊張で心が溢れそうになる道のはずだが隣に見慣れた金髪の子がいるせいか、そんな淡い期待や心地のよいであろう緊張というものはほとんど感じない。
「クラスは秀と一緒がいいな」
「運次第だな」
「なら大丈夫、私たち幼馴染だし」
そういえばこの幼馴染とクラスといったもので離れた記憶がない、少なくとも小中学校の9年間は同じクラスだったはずだ、何か圧力を感じる。
学校の近くの通りに進むにつれて同じ制服をきた人が増えていく、その光景をみて自分が高校生になった事を改めて理解する。
同じ制服を着た人たちはどこか緊張した面持ちだったが、隣にいる女の子だけがいつもと変わらない顔をしていた。
「あの人は何をしているの?」
凉が質問してくる、彼女の視線を追っていくと少し先に歩いている男がみえた。
「多分緊張しているんだろ、腕と足が実際に一緒に出てる人なんて初めて見た」
「変な人もいるのね」凉はつまらなさそうにその言葉を言った。
「あれは、確かに変だけど、いかにも真面目って感じの見た目してるな」
緊張した男は四角い黒ぶち眼鏡と綺麗に長さが整えられた髪型のいかにも委員長というあだ名が似合いそうな見た目をしている。
「真面目、秀とおんなじだね」
「あそこまで緊張した人と同類にしないでくれ」
「わかった」
道を歩いてゆくと桜が増えてゆく、満開の桜がほかの木と間を開けないくらい満開に咲き、綺麗な春色の天井を作られていった。
ようやく学校に到着し、校門をくぐる。
係の人が配っているクラス分けが書かれた用紙を受け取り、自分の名前を探してみすると、隣から「またよろしくね」と嬉しそうな声が聞こえた。
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