大寿の木の山櫻
彼女は大学の図書館に行った。津雲藩についての文献や史料をありったけ探した。しかし、祠についての記述はどこにもない。
「本当に祠はあるのかしら?」彼女は思った。
それらの史料の中に一つ陰陽師の日記があった。鶴姫と亀姫についての記述がある。読み慣れない歴史的仮名遣いは難しい。彼女はありとあらゆる知識を総動員してその内容を読んだ。
「赤月の蝕夜 時に歪みが生づる 正しき時の流れ 澱み歪んだ時が流れ出づる 我は術を施し正しき時を揺り戻す 姫の血縁の者出づるまで 我その術を施し書を祠に隠し置くとする」と言うものだった。祠の地 大寿乃木乃山櫻とある。
彼女は「大寿の木の山櫻」を探した。地図にはそのような地名は無い。教授に聞いてみることにした。史学科の教授山里一三郎は生き字引の様な人物だ。歴史に関わることは大抵何でも知っている。
「あの、山里先生。津雲藩の大樹の木の山桜って文献にあったのですけど、何のことか分かりますか?」
「大寿の木の山桜。それはだね、津雲藩の菩提寺の事でしょうな。津雲藩は代々大寿寺と言う寺に藩主やその家族を葬って供養していたのだよ。いまではその寺は廃寺になってしまっているのだけどね。古地図に大寿寺と出ているはずだから調べてみなさい」
彼女は教授の言葉どおり古地図で大寿寺を調べた。大寿寺跡は津雲城の裏の山を西に行ったところにあるようだ。西にどれくらい歩けば良いのだろう?
彼女は途方に暮れた。
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