第7話 自由都市アレン③

ブラウン「さて、お戯れはここまで。これから先は私は同行できません。」


ヴィクトリア「そ、そんな私たちは魔法が使えないのよ!」


ミノル「そ、そうだよ。これからどうやって逃げれば、、、、。」


ブラウン「ヴィクトリア様、私と共にズワールドヘ戻り国民に、王に事情を話しましょう。」


ヴィクトリア「私が!?でも、私とマリアは指名手配中なんじゃ?」


ブラウン「だからこそです。ですがご安心召されよ。私が命に変えてもお守り致します故。」


ミノル「でも、危険じゃないのか?フレア帝国もバックにいる訳ですよね?」


ブラウン「ええ、なのであなた方には陽動になっていただきます。」


ミノル・マリア・エバ「え?」


ブラウン「ここから北東に進めば、自由都市アレンへの関所にかかるでしょう。そこをなんとか進むのです。」


ミノル「ま、まてよ!さすが2人守りながらは、、、。」


ブラウン「ふん。なにを情けないことを!!しっかりしなさい!この世界で今、ズワールドの本領、魔法を使えるのは貴方とマリア様だけです。」


ブラウンは期待の籠ったキツい瞳でこちらを睨んだ。期待だけではない、これは心配しているのか。肩をぐっと押され、ブラウンは後方をみた。


ブラウン「時間はございません。もうじきここにフレア帝国兵が来るでしょう。」


脚のないマリアに向かい屈んで顔を伏せたまま

ブラウン「マリア様、どうかご無事で、ミノル達を頼みますぞ。」


マリア「ええ、もちろんよ。でも、そのブラウンさん?でいいのかしら。私の足はもう歩けない身体よ。一体それでどうやって移動すれば、、、。」



ブラウンら忘れられていることに少し落ち込んだ表情を見せた。


ブラウン「マリア様、私は王宮に直属に仕えていた召使いです。あなたには強大な魔力が王家から引き継がれています。」


ヴィクトリア「でも、さすがに無くなった足を蘇生できないんじゃ、。」


ブラウン「もちろん。ですがミノル殿に担いでもらうのは許せな、ゴホン!負担が大きいので、とてもいいものを用意致しました。」







マリア「ではごきげんよう!ヴィ!ブラウンさん!」


とてもいい笑顔でマリアは手を振った。ブラウンが用意したのは巻を運ぶために使われる背負子だった。


(女性でもさすがに重い。。。なんていったら殺されるな。)


エバ「ばーばーい!」





遠くからワルキューレが飛ぶ音が聞こえる。早目に隠れるか日が暮れないと見つかったら一巻の終わりだ。


エバ「ん。」


ミノル「手、繋ぐのか?ん!」


エバはよく分からない強さがあるとしてもまだ子供だ。危険な目には合わせられない、


ワルキューレの活動範囲はフレアからそう遠くは離れられないはずだ。フレア自体損害が大きすぎる。守りを捨てるほどこの1件には関与しないはず。


ぐぅ〜〜〜〜〜〜。


エバ「おらか、へっら。」


ミノル「そうか、もうそんな時間か。しばらく歩いたけど、まだズワールド領から出られていないだろうし、もう少し待っててな?エバ。」


マリア「ミノル様?ここは私めにおまかせを!」


マリアはそう言ってポケットをごそごそと探った。


マリア「これは、ビスケットというらしいわ!甘くてしょっぱくて、美味しいのよ?どうぞ?お嬢さん?」


エバ「ビスケット!!!!」


今までにないくらいいい発音でビスケットを要求した。


両の手を伸ばし、欲しがった。マリアはすこし笑って、ビスケットを渡した。


エバ「もぐもぐ!ぱ!おいちい!」


ビスケットの割れたかすがぽろぽろと落ちてる。ワンピースに付着するも気にしない様子。

でも、エバの両親は結局どこにいるのだろう。でもなにか普通の子供とは何もかも違う。


ガサガサ!!


ズワールド兵「おい!!!貴様!!!止まれ!!」


武装した兵士が4人、見つかってしまった。ズワールド兵だ!


ミノル「エバ!逃げるぞ!」


ミノルは咄嗟にエバの手を引いて走った。


ズワールド兵「きっと宝具を盗んだ指名手配犯だ!捕まえろ!!!」



マリア「ああん!ミノル様!揺れが激しいですわ!」


ミノル「ちょ!言ってる場合ですか!おとなしく捕まっててください!」


これはまずい、このまま走っても逃げ切れる気がしない。どこか回り道を、、いやマリアさんを落っことしたら最悪だ。


マリア「ミノル様?どうして逃げるのです?」


ミノル「どうしてって!ピンチだからに決まってるでしょ!?」


え?


エバとマリアさんは何でこんなにも余裕そうなんだ?



エバ「ん。おちょい。」


エバは、繋いでいた手を振り払った。


その瞬間からぐわっと加速し走り出した。


ミノル「エバっ!?!?」


どんどん離されていく。あんな小さい身体にどんな力が!


エバ「あっ!ちょんぼ!」


あんなに早く走っていたのにトンボを見つけてUターンし、敵の方に向かっていくでは無いか。


ミノル「ちょちょちょちょ!!!ちょっと!エバ!!!もどれ!!!」


マリア「ミノル様!!止まらないで!!」


ミノル「え?でもエバが止まらなくてよろしい。その変わり少し踏ん張りなさい!」


マリアは、風の魔法を使った。


マリア「春風と神風よ!巻き戻し、吹き荒れろ!」


エバ「おっ!」


エバを風がそっと包み浮かせ、すぐ後ろを走っていたズワールド兵を2人吹き飛ばした。


ズワールド兵「うああああああ!!!」


ミノル「え、、、。」


マリア「アタクシたちを戦力だと思ってもいないのですか?」


そう言ってふっと微笑んだ。

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リョーグベル叙事詩 稲荷 壱鬼 @kyogenheki

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