第6話 自由都市アレン②

その晩は、鹿肉を焼いて食べた。血抜きをしていないのでかなり生臭いが、あまり気にならなかった。

エバもヴィクトリアも疲れていたようで、ぐったりとしていた。そのうちエバはうとうとし始めたのでヴィクトリアの膝の上で寝ているようだった。

マリアはというと傷の蘇生は完了し、あとは目覚めるのを待つばかり。ヴィクトリアさんから聞いたんだが、どうやら俺の治療魔法は他より秀でているらしく。前線で活躍できる実力だとほめてくれた。

治療を終え、うとうとしている二人を見て疲れていることを理解した。いつの間にか寝てしまったようで、夢うつつ、風で木々が揺れる音動物の鳴き声が妙に心地いいと感じた。



ミノル「ふあ~~~。ここは、、、、。あ、そうか。あの国から抜け出して、そんで、、、。」


(ん?すごく柔らかい枕だな。ん)


マリア「お目覚めになったのですね?」


ミノル「マリアさん!?!?目覚めたんですか??」


驚いて大きい声を出してしまった!エバもヴィクトリアも呻きながら起きた。


エバ「あららか、れんきらころれ、、、。」


ヴィクトリア「ううん、、、、。ミノルさんどうなさいましt。」


言葉を言いざまに目を大きく開けヴィクトリアも驚いたようだ。


ヴィクトリア「マリア!?起きたんですね!!よかった!!」


マリア「?」


ヴィクトリアの驚いた顔が面白かったので、つい見入ってしまったが、


ヴィクトリア「ミノルさん!!いつまでマリアに乳枕してもらってるんですか!?!?!」


寝ていたマリアの胸を、知らず知らず枕にしてしまっていたようだ。マリアはニコニコと笑みを浮かべながら耐えていたのだろう。


ミノル「ああうっごごごごごごめんなさい!!マリアさん!!」


脚のないマリアはふっと起き上がり、足を失った自分をしばらく見ていた。


ミノル「マリア、、、さん??」


マリア「マリア、、、、?」


なにも覚えていないような口ぶり、傷を負いすぎた彼女がやはり無傷なわけがなかった。それを悟り、空気が冷えていく。


風が吹き、木々が揺れ普遍的な情景にこれが試練の始まりだと告げるのであった。



ブラウン「おそらくは、魔力行使の影響でしょうな。ミノル様とて、決して例外とは思わぬように。」


ブラウンはそういってミノルを見た。


ヴィクトリア「ブラウン、戻ってきたのね。状況は?」


ブラウン「およそここからであれば半日ほどで着く場所に村を発見いたしました。」


ミノル「半日!?なんだってそんなに遠いんですか?」


ブラウン「村であれば、すぐにございます。ズワールド領になってしまいますが、、、。」


ヴィクトリア「ねえ、どういう意味、、、ブラウン?」


ブラウン「ズワールド領でもあなた方二人、ヴィクトリア様、マリア・ズワールド様は重要人物として指名手配中でした。」


ヴィクトリア「国王が私たちを?」


ブラウン「生死は問わぬ。捕らえろ。と。」


ヴィクトリア「ちゃんと話せば、、、、。」


ブラウン「いいえ危険です。ズワールドは、フレア帝国と不戦条約と同盟を結びました。」


ミノル「つまり、この濡れ衣を俺らにきせてこの一件をかたずけようとしている。」


ブラウン「さよう。ズワールドだけではありません。フレア帝国軍も出動し本日より我々を殺そうと動いているのです。」


ブラウン「したがって、急いで帰ってまいりましたが。マリア様もご無事で、、、と喜んだ矢先このような事態になるとは。」


マリアは、体は完全とはいえないまでも、回復した。記憶に関しては礼儀、作法、言葉までは覚えているものの、今朝からの記憶しかないという。


マリア「でも、確かに覚えていますの。。。私を救ってくださった。あなただけは!」


ミノル「どおうわあああ!!?」


マリアは、勢いよくミノルに抱き着いた。足がないからよけるわけにはいかないし、、、、。


マリア「朦朧とする意識の中、足を切り落とされた私を案じて敵に飛び込んでくださるとは、、、、。」


ブラウン「ミノルサマア!!!!!!」


ミノル「えええええ!?これ俺が悪いの!?!?!」


鬼の形相でブラウンが見つめている。うわ、ヴィクトリアさんもなんだその表情!あああ、エバも!


それをよそに、マリアは目を閉じすり寄るのだった。


ミノル「ああああの、マリア様?そんなことは一度も、、、。」


マリア「ごまかそうとしても無駄ですわ!記憶は少しなくなっているかもしれませんがこの気持ちこそ本物でしてよ!それに私のことはマリアとお呼びくださいまし!」


ミノル「そ、そんなこと言われましても、、、、。あははは。」


ヴィクトリア「ねねえ、マリア?まさか私のことも覚えてないのかしら。」


マリアの表情が一変した。


マリア「忘れた!?ああああそうですね忘れたかったわよ!けどしっかりその憎たらしい顔は覚えてますわよ!」


ヴィクトリア「何ですってよくもそんな口が叩けますわね!?急にいなくなったと思ったら次は私の従者に向かってよくもそんな!!!このっ!!腐った瓜を二つもっ!!このっ!!!」


マリア「ああああ!!!いだいいだいだい!!!もゲルもゲル!!!あだだだだだだ!!」



ミノル「この二人はなんて醜い争いを、、、。ブラウンさ。」


ブラウンは今まで見たことのない笑みを浮かべていた。なんて幸せそうなんだ!

!死んでもかまわないとばかりの顔ではないか!!気持ち悪!!


ブラウン「ミノル様、、、、、、、、、そこ変われ。」


ミノル「とんでもない笑顔で何てこと言ってんだよ!!!!」


エバはというと、ずっと眠っている。こんなにうるさくてよく眠れたもんだ。





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