第4話 消滅
ズワールド国の宝具、消滅はすぐに広まった。ズワールドの宝具の恩恵。それはズワールドの民が魔法を行使できる力だった。大気中の魔力を体内で変換する作業をその赤い瞳で担っていたらしい。その機能が失われ、魔法を使えないズワールドの民はその事実をいち早く悟った。
反逆者マリア・ズワールドは大罪を犯したとされ、フレア国内で囚われの身となった。
それと同時に、現フレア帝国国王ゴードンも遺体で発見された。
謎は深まるばかりだが、以上が俺が気絶していた間の出来事。
ヴィクトリア、エバ、ミノルは、リーフ村とは逆方面、フレア帝国郊外の山林に身を隠していた。
辺りは、すでに暗く小高い丘で焚火で暖を取っていた。
エバ「いりょ、ちょういうこぽなのれす。」
エバはこの調子でずっとしゃべっていた。まるで今までのことを説明しているように
ミノル「なーんとなくわかったか、といえばわかったような~。わからないような。」
ヴィクトリア「え、、、、まさか。」
ヴィクトリアは立ち上がり左手を天へかざした。
ヴィクトリア「フレイム!!!」
暗闇の中煌々と燃ゆる爆炎は、空へ向けて放たれる。。。ことはなかった。
ヴィクトリア「そんな、、、、。魔法が、、、。」
なにもかける言葉が見つからなかった。
ヴィクトリア「ミノルさん、私の瞳はどうなってますか?」
泣き出す寸前の声で尋ねた。以前のように赤く紅く朱く燃ゆる瞳は見る影もなく、茶色の瞳に変わっていた。しかし今にも泣きそうな顔はたとえようもなく美しく吸い込まれそうなくすんだ。栗色の瞳になっていた。
ミノル「ヴィクトリアさん、、、。あの。」
返答を察したからか、ヴィクトリアは目を伏せゆらりと立ち上がった。
ヴィクトリア「私、少しだけ海を、、、、見てきますわ。」
あまりにも目も当てられない後ろ姿だ。出会った当初、綺麗に束ねられた黄金色に輝く髪は解れて哀れな姿だ。
(ヴィクトリアさん大丈夫かな。そりゃあまあ、信じてたマーリンに裏切られ、目の前で友達が八つ裂きにされ、さらに魔法が使えないなんて。)
エバ「にいちゃ、まろうはまらちゅかえるろ。」
ミノル「ん?」
明け方、ヴィクトリアは帰ってきた。泣きじゃくったであろうその眼は気力はかけらもなかった。
ヴィクトリア「ミノルさん、エバさん、、、、私はどうしたらいいのでしょうか。まだわかりませんがおそばにいてもいいですか。」
小さい声でつぶやくように言った。いいやささやいたっていうのが正解かもしれない。
ミノル「ああ!もちろんですよ!ヴィクトリアさん!でも~ほら落ち込んでてもいいことないぜ?次何をするか考えようぜ?」
ヴィクトリア「ミノルさん、ミノルさんも魔法は使えないんでしょうか?」
ミノルさん「え?だって俺はフレア帝国の民だから、、、。」
ヴィクトリア「私と契約したじゃありませんか!だから魔法だって使えるんです。ほら」
ヴィクトリアは手をミノルに向かって、さっと振った。
(うおわ!眼帯の奥が熱い!)
ヴィクトリア「じゃあ次は、右手から火炎が出ている数秒後の自分をイメージしてください。」
(ふむふむ、、、右手から炎ねえ、確かに煙草を吸うときに手から火が出たらなあ。なんて考えてたけど。)
その時、頭の中に炎の出し方が浮かんだ。フレイムという言葉を、、、、
ミノル「うおおおおおおおお!!!!フレイム!!!!!」
カチっっつっつっつっつつ、、ボッ!
中指からライターほどの火がでた。
エバ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひいいいいいいひいいいいわははははっははは!!!!」
エバは、笑い転げ。ヴィクトリアは未だ真顔だ。
ミノル「右手から炎で、、、、いいんだよな。なんでこれっぽっちなんだ?」
ヴィクトリア「って、え!?!?!?!」
驚いたヴィクトリアの姿に、みな仰天した。
エバ「ぴぇ!!!!?」
ヴィクトリア「魔法使えるじゃないですか!!!」
ミノル「はっ!!!!ほんとだ!!!」
ガサガサッ
草むらからも物音が聞こえた。フレア帝国の連中か?と身構えた。
???「はあーーーーーっはっはっはっは!」
ミノル「誰だ!!」
???「ぬうわーーーーーっはっはっは!!」
ヴィクトリア「この声は、、、。」
???「ヴィクトリア様のピンチにこのローズベルト、駆けつけて参りましたぞ!!!」
木の上から見事な着地。
???「ヴィクトリア様~~~~!!!寂しゅうございましたぞ!!」
ヴィクトリア「ミノルさん、いえ、ミノル様。エバ様。紹介いたします。こちらはブラウン・ローズベルト。王宮内で務める執事よ。」
ブラウン「感動の再開だというのに盛大なスルーでございますか。とほほ。」
(とほほって真顔で言うやつ初めて見たな。)
ブラウン「ところでヴィクトリア様、一緒に居られたあやしげな魔術師はどうされたのですか??」
俺たちは、ブラウンにすべてを話した。
ブラウン「どおりで、村の者や国内でも騒ぎになっているのですな。フム、では今すぐズワールドへ帰還しましょう。」
ヴィクトリア「でも!!マリアは見捨てておけないわ!それに、、、大罪人だとしても、ズワールドで裁くことがこの国のためにとって、、、」
ミノル「ヴィクトリアさんに賛成だ。」
ブラウン「これはこれは、ヴィクトリア様の騎士気取りですかな?そんな貧弱な成りで。」
ミノル「みてくれはどうだっていいんだよ!!だったら、ブラウンさん。ズワールドの人間は今、魔法を使えない。ってことは間違いないんだな?」
ブラウン「そうです。すでに多数の地域で、わが国家に対する不満は高まる一方でしょう。」
ミノル「でしょうね。すでにフレア帝国でも、ズワールド国のマリアが王を殺したこと。ズワールドの宝具を奪取したことに関して、ズワールドが戦争を仕掛けてくると踏んでいる。だから現在も籠城戦に徹しようと、兵の動きが見えない。」
ブラウン「なればこそ、今のうちに国に戻り士気を取り戻さねばならない!!」
ミノル「マリア・ズワールドが魔法を使えないと分かった場合、どうなると思う?」
ブラウン「・・・。」
ミノル「フレア帝国は我ながらずるがしこく、機動力はこの世界でも随一だろう。フレア帝国が負った損傷も、あのマーリンってやつがやったこととはまだ気づいてないだろうし、ズワールドの戦力とわかっているからこそ、攻めることではなく守りに徹しているんだ。だが、攻撃への転換は早い。それに魔法が使えないという事実が広まれば、ズワールドの存命も時間の問題だろう。」
ブラウン「我らズワールドを侮辱は許してやろう。だが、なにか策があるんだろうな?」
ミノル「それはな。」
チッチッチッチッチッチッッッッ。。。。ボウ!!
マリア・ズワールドは現在も未だ意識が戻っておらず、地下に幽閉されている。
ミノルたちは今、フレア城下、炭鉱の中をすすんでいる。
ミノル「この炭鉱は、発掘の為に掘られた。というが、本当は王族の逃走経路。シェルターに使われている。ちょうどこの上が、豚箱ってわけだ。」
ヴィクトリア「道中本当にだれとも出会わなかった。、、、、籠城戦ってのはあながち間違ってはなさそうね。」
ブラウン「・・・・ミノル様。」
ミノル「様??」
ブラウンは立ち止まり、頭を下げた。
ブラウン「あなたは、ヴィクトリア様をお救いいただいた恩のあるお方。さらにはこの国のために知恵をお貸しいただいた。先ほどのご無礼をどうかお許しください。」
ミノル「・・・。いいや。俺もヴィクトリアさんに貸があるだけですよ。」
エバ「まっらく、しゅらおららいやるら!」
ブラウン「ところでミノル殿。このお子様は一体。。。」
ミノル「エバっていう子で、迷子なんだそうです。ごたごたしてこっちに連れてきてしまったので、面倒を見てるんです。」
ミノルに肩車されているエバは、今の状況を楽しんでいるようだった。
ミノル「よし!!このあたりだと思う。」
探鉱の真上を見るが、特に何特徴はない。看板や採掘痕があるわけでもない。
ヴィクトリア「じゃあ、ミノルさん。いいですか。転送魔法のやり方を教えるわ。でもこの4人を同時に運ぶのは、少し疲れるのかも。基本は火炎魔法と同じイメージしてその言葉でポータルを作るのです。」
ミノル「わかりました。牢獄には一度お世話になってる。その場所をイメージして。。。。。フン!!!」
ブウウウウウン・・・!!
ヴィクトリア「いいセンス、、、、、、、ですわ!!」
黒いポータルが出来上がった。ヴィクトリアの物と比べると心遣いも足りない少し狭いポータルだ。
エバ「いりらんろり!!!」
エバは、ミノルの肩から飛び降りポータルへと走り出した。
ミノル「エバ!!!ちょっとまって!!!」
ヴィクトリア「監視の兵がいるはず!!急いで追いかけましょう!!」
ミノル「了解!」
ゴちっ!!
ミノル「いでっ!」
ヴィクトリア「あいたっ!!」
狭いポータルに同時に入ろうとした二人は、頭をぶつけた。
ブラウン「何をしているですか!!!!私でもヴィクトリアの触れられないのに!!」
ヴィクトリア「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!!??早くいかないと!!」
そういって先にヴィクトリアは先にポータルに入った。
ブラウン「ミノル様。・・・・・・。はやりあなた、、いけ好きませんね。」
ミノル「なんでだよ!!!」
ポータルを出ると、両足を無くしたマリアが突っ伏すように倒れていた。
ヴィクトリア「どうやら監視はいないようです。」
エバ「わらしがけてぃらてぃとひたろん。」
ミノル「何にせよ。よかった。今のうちだな。」
ブラウンが遅れて到着した。
ブラウン「マリア様!!!」
(ひどい損傷だ。失血して意識が戻れずにいる。このままでは、まずい。)
ミノル「癒せ!!!」
さわやかな風が出現し、マリアの患部を撫でる。
ヴィクトリア「・・・・。ミノル様。いいセンスですわ。・・・。時期に意識が戻るでしょう。」
ガコン!・・・タッタッタッタッタ
監視兵が下りてくる音だ。
ミノル「まずい。監視兵だ。早く逃げないと!」
エバ「ぽーちゃる、きえちゃっらりょ!?」
ヴィクトリア「ポータルが!!?もう一度出せますか!ミノルさん!
!」
ミノル「ああ!わか、、うっ、、。」
眼が熱い。燃えるようだ。思うように力が入らない。意識ははっきりしているが。思うように動けない。
ブラウン「まだ魔力を行使しきれていないようです。その反動が来ている!」
ヴィクトリア「そんな!!?」
ブラウン「仕方ありません。ここは私が!!」
ミノル「でも、、、魔法は使えないんじゃ。。。」
ブラウンは白手袋を外し、
ブラウン「ズワールドには魔法を使わずしては戦えないと。だれが言ったのですか??」
監視兵「誰だ!!!お前たちは!!!」
監視兵たちは武装していた。数も多い、地上からどんどん降りてきている。
監視兵「いっ急いで本部へ連絡を!!」
通信機を持ち連絡をしようとする兵士を、ブラウンは見逃さなかった。
鋭く間合いに入り、瞬時に通信機をこぶしで破壊した。そこからの連撃は早く腹に一発。その兵を押し倒し、複数人転ばすと、仲間が多く銃の発砲をためらう兵士に蹴りを入れた。勢いはすさまじく吹き飛んだ巻沿いを食らった。兵たちが次々と気絶していく。
ミノル「ブラウンさん、、、、かっけえ!!!」
ヴィクトリア「私の護衛ですのも、これくらいは容易いですわ。」
ブラウン「もっと本気でも構いませんよ!!」
(ふつう、殴って銃とか通信機とか壊すか!?しかも一発で!)
ブラウン「ミノル殿、いつまでもそうしていても結構ですが、マリア様の為に転送魔法を!!」
ミノル「はっ、はい!」
ミノルは再度、イメージと魔力の伝達を行う。
ミノル「転送、、、、、。ぐっあ!やっぱだめだ!言葉が浮かばない!!」
ヴィクトリア「ブラウン、、もう少し時間を!!」
(聞き流しながらも、すでに戦い続けている。年の割にはまだまだ動けそうだな。)
その騒がしさからか、マリアが息を吹き返した。
マリア「ごっふ!、、、、ぜえ、はあ。う、ウインド!」
ヴィクトリア「マリア!?」
風によって吹き飛ばされた。その先には、マリアが作ったポータルがある。
まだ意識がはっきりしないらしく。ふっと気を失ってしまった。
エバ、ヴィクトリア、ミノルは、ポータルへと飛ばされ、意識を失ったマリアをブラウンが抱え、見事脱出に成功した。
ポータルの先は、敵地の真ん中。先に開いたポータルに兵士が気づき、すでに包囲されていたのだ。
ブラウン「完全包囲とはまさにこのことですな。」
一般兵だけではない。戦闘機や、戦車など
ヴィクトリア「絶体絶命ともいうわね。」
ミノル「来い!!!」
光が体を包み、装備を身に着けた。
ブラウン「ムッ!?その刀は!」
ミノル「え?」
フレア軍「完全に包囲した。そこのマリア・ズワールドは国王暗殺の容疑。宝具奪取の罪に問われている!おとなしく引き渡すか、死か!選択する時間を与える!!」
上空を飛ぶ機械音や風圧、砂埃が吹き荒れ咄嗟に刀を構えたのはいいが正直勝算は一つもない。
ああ、まだ頭がくらくらする。
ブラウン「ミノル殿。」
ブラウンがそばに立つ。未だ戦う気は有り余っているようだ。
ブラウン「私が引き止めます。どうか皆さんを連れてお逃げ下さい!」
ミノル「この数ですよ!?いくらブラウンさんでも、、」
ブラウンは何も言わずミノルの眼をみた。頼む、逃げてくれ。と。言葉は意味をなさない状況もあるのだ。
マリア「氷柱よ!突き刺すように道を作れ!!!」
悪寒のような冷気が背中を走ったような感覚がした。それはマリアから放たれた氷の魔法だ。
霜柱のように地面が盛り上がり、大地に氷柱を形成していく。
フレア兵「うわあああああ!!!」
下からの攻撃を避けきれず、氷柱に削られ、突き刺さる人々。さらに空中飛行する兵器に対しても届くように調整され、フレア軍は、不意打ちを食らう。
ヴィクトリア「マリア!?あなたも魔法が!?」
マリアは、自分に治癒魔法を行い傷はすっかりなくなている。赤いオーラを纏い空へ飛んだマリアは、さらなる魔法を展開する。
右手を上げ、魔法を唱える。
マリア「削り取る神風は瞬時に更地へと変える!!」
次に左手をあげ
マリア「灼熱は、すべてを抱擁しすべてが灰と化す!!」
豪風と炎はやがて合わさり、逃げる暇もなく兵は燃える竜巻に飲まれた。
フレア兵は予想以上の威力に指示系統が混乱に陥る。200を超える武装兵、兵器は耐久力のあるもの以外を塵に変えてしまった。
ミノル「すごい魔力だ!!!巻き添えを食らう前に逃げないと!!」
ヴィクトリア「ミノルさん、ポータルもインターバルは終ってるはずです!今一度!」
ミノル「わかった!!!」
暴風に身を歪めながらも、ポータルを完成させた。
ミノル「さあ!!早く!!」
(意識が遠のく、みんなが入るまで持つか!?)
最後はブラウンに抱えられポータルからの脱出を果たした。
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