3章

3-B 『トンネルを抜けたらきっと憧れも雪解けのように融けていくかな』

――あなたへの 強いあこがれを

「……ううん、こうじゃない」

 つかさから歌奈への気持ちを聞いたとき、自分にはどうすれば良いのかわからなくなったは、冬休みの間はずっと歌詞を書いては捨て、書いては捨てをかえしていた。

 歌奈でさえ『そう』なのだ。おそらくもうこじらせているだろうこの気持ちをぶつけたところで、つかさが歌奈からのおもいを受け止め切れなかったように、かかえているおもいを歌詞にめたところで、ひびくのだろうかと。

 第一、こんな直接的な言葉よりも、歌奈ならを好む。それなのに、書こうとしている言葉は歌奈のことを無視していないだろうか。

「……作詞、難しいなあ」

 こんな熱にかされたような歌詞を、受け入れてもらえるだろうか。

 ***

「……え、マジよくね?」

「いけるいける。歌奈とは作風ちがうけど」

ファミレスではるあんに下読みをお願いしたところ、ひようけするくらい好評で、きつねほおをつままれたような顔をした。

「やっぱ、歌奈ちゃんには合わないかな」

「……んー、いや、そうじゃなくて。熱はあるけど、あの子どんかんだからさ」

「キラキラした歌詞の方が、歌奈にはウケそうだからなあ」

「そうだよね……。うすうすちがう気はしてたんだけど」

『そこでさ、』と、はるあんと相談したという案を聞くと。

「『短歌をかす』って、そのつもりだったけど……」

「短歌に、キラキラ感というか、すごくれいな景色が出るじゃん? そういうのはどうかなって」

 短歌そのままだと、リズムがくずれてしまう。なやんで、答えが見つからなかったのに。頭の中がぐるぐるしてしまい、うまくまとまらない。

 結局、『直してみる』と告げて、また後日に聞くことにしたが、思ったより、自信を無くしている自分がいた。

「短歌は出来るのに。でも、一応直して、ダメもとで見せてみよう。うん」

ファミレスを出てひとり、そんな風につぶやいていたら。

「――しーのっ!」

「きゃあっ!? はるちゃん?」

「ちょっと寄り道しよーぜ」

 はるがホットのかんコーヒーを2本持ちながら、にっ、とがおを見せた。

「――短歌って、思ったよりちがうなあ」

「うん。……私も、ここまでなやむとは思わなかった」

「でも、書きたいんだろ」

「うん」

 そして、ずかしそうになやみながら、はるが言った。

だいじようのキラキラを、ぶつけちゃえ!」

 かんコーヒーを胸の前で包みながら、白い息をいた。

「――『ゆきけがいつか来るよと友と飲む 迷いをかすかんコーヒーで』」

「……いいね」

「ありがとう、はるちゃん」

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