彼女の家で宅飲み

「ただいま〜」


買出しに行ってくれていた彼女が帰ってきた。


「ふーう。」


少し落ち着いて、笑顔で迎えることにした。


「おかえり」


若干気まずくて顔を合わせられない。

僕が悪いのはわかっているが、まだ気持ちの整理がついていない。


「うわー、疲れたー」


そう言い彼女は僕の座っているソファーにダイブしてきた。

無邪気でなんて可愛いんだ。


「お疲れ様。わざわざ買い出しに行ってくれてありがとう。」


本当は僕が買いに行くべきなのはわかってはいる。

けれど彼女がわざわざ買いに行ってくれるのは、やっぱり嬉しいのだ。


「へへへ」


その照れ方が本当に可愛い。

それだけで白飯3杯はいける。

これは割とマジ。


「ねぇ、ご褒美に頭なでなでして」


そんなのご褒美だ。

なんならお金も払える。

上目遣いで早く撫でろとばかりに見つめてくる。

そんな彼女の頭をわしゃわしゃ撫でた。


「そろそろ喉渇いたし、飲もっか」


そう言い彼女はカバンから、ゴソゴソ何かを探し始めた。

さーて何が出てくるのだろうか。


「じゃーん」


そう言って彼女は赤い麒麟のビールを取り出した。


「もしかして、銘柄にこだわりとかあった?」


「飲めれば銘柄とか関係ない派だから安心して」


そう僕が言うと、彼女はまた少し照れたように思えた。


「それじゃあ、かんぱ〜い」


彼女は僕にビールを手渡しそう言った。


「ゴクゴク、プハー」


今日も良い飲みっぷりだ。

彼女はビールだけじゃなく、普通のお茶すらもこの飲み方をする。

そこも可愛い。

僕もビールを飲み、しばらく雑談をして楽しんでいた。


「あ、忘れてた」


彼女は急に大きな声でそう言い出した。

何やら鞄をゴソゴソし始めた。


「あった〜やっぱりこれがないと始まらないよね」


と言い、取り出したのは「するめ」だった。


「いただきまーす」


めちゃくちゃ美味しそうに食べている。

何しても本当に可愛いなあ。

僕もするめが食べたい気分だったので、気が合うなあ。

彼女が持っているするめを僕も食べようと手を伸ばすと。

あからさまに嫌そうな顔をして、そっと僕の手を避けた。


「これはあげないよ」


そう言い可愛い顔をプイとそらした。

可愛すぎる。

もうニヤニヤが止まらない。

もはや彼女をつまみにして酒を飲める。


「他のは好きに食べていいけどこれはダメ」


こんなに色々なおつまみがあるのにするめは譲れないらしい。

こだわりは大切だしね。

するめを食べる彼女を見てたらなんか、するめ食いたくなってくる。

なんかいいのないかなとゴソゴソ、カバンをあさる。

大量のおつまみが出てきた。

たしかにおつまみは大事。

けれどいくらなんでも多過ぎな気がする。

定番のイカ系やチーズ系、干物系やお肉系オリーブオイルに浸かった缶詰など。

この量は店のおつまみ全種類買ってきたのだろう。

おつまみは意外に高いから、これだけ買うには相当のお金がいるだろう。

しばらくあさっていると、イカそうめんが有った。

イカそうめんを鞄から出し、彼女が座っているソファーの隣に座り食べる。

やっぱりイカそうめんは、美味い。

ビールを飲みながら、チビチビイカそうめんを食う。

なんか横から視線を感じる。

そっと横を見ると彼女が羨ましそうにこちらを見ていた。


「もしかして、イカそうめん狙ってる?」


「別に狙ってはないけど」


ならその、何かを訴えるような上目遣いは何なんだ。

きっとイカそうめんが食べたいのだろう。

鈍感な僕でも流石にわかる。


「食べる?」


相当食べたそうだったので、イカそうめんを差し出した。

すると彼女は、イカそうめんを奪い取るように取る。

よっぽど食べたかったのか、僕があげたイカそうめんを一気に頬張った。

人掴み分を上げたのでまあまあな量だ。

沢山木の実を口に入れたリスみたいなほっぺたになっている。

かわいい。


なんと、彼女がイカそうめんを食べ終わった。

けれどまだイカそうめんを食べたそうに、こちらをみている!

イカそうめんをさらにあげますか?


 ▶はい

  いいえ


選択肢はもちろん、「はい」に決まっている。

当たり前だよなあ。


「しょうがないなあ」


彼女が欲しいのなら仕方がない。

イカそうめんが入った袋からもう一摑みを出す。

すると、彼女は可愛い口を開ける。

僕はその可愛い口にそっとイカそうめんを押し込む。


「う、うんおいふぃ」


そういいながら、満面の笑みを浮かべている。

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