問題だらけな初めてのダンジョン
私たちが行くダンジョンは始まりの洞窟。
名前の通り初めてヒロインが攻略するダンジョンである。
「ここは最初のところだからあんまり緊張しなくて良いよ」
「はい!私にはお守りもあるんで緊張してないです。むしろ壊したらどうしようとか思ってて」
私はナナミくんにもらった守護のお守りを見せる。
「それの仕事は持ち主を守ることだから、なるべく命に関わることは無いようにしたいけどね」
「そうですね」
ナナミくんに怒られる。
死にかけたら怒られる。
「入るけどユキナちゃん俺に付いてきて」
「了解です」
私のダンジョンデビューだ。
緊張と不安が入り混じる。
「暗いですね」
「足元気を付けてね」
気を付けないと転ぶから本当に集中しないと。
何処にモンスターがいるか分からない怖いから1回索敵したい。
「先輩一度索敵しませんか、確かこのまま進んだら広いところに出ますよね?」
ゲームで見た通りならそのはずだ。
頼むダンジョン構造一緒であってくれ!
「良く調べてるね。そうしようか」
合っていた。私は安堵の声を漏らす。
問題なく一直線の道を歩いて大きな広がったところに着く。
「ユキナちゃん俺がやるから見張りお願い」
「私やりますよ」
「そう?じゃあお手並み拝見させてもらおうかな」
「じゃあ失礼して」
私はナイフを取り出す。
「何をするつもり…」
「怒らないでくださいよこれが1番私ができる正確な索敵方法なんで」
少しだけ自分の指を傷つけた。
裁縫の針が指に少しだけ刺さる感じでチクリと一瞬だけ痛みを感じるくらいで問題は無い。
「行って」
私は血で小さな鳥を作る。
そいつは羽を広げて奥に飛んで行った。
一発で成功するとは私、才能あるかも。
「ユキナちゃんそれいつ覚えたの。確かに操作系の魔法を行使した人に近い物、血液とかは視覚のリンクや動かせやすくなるけどね」
「ここに入る前に本で読みました」
嘘です本当は攻略サイトの取得できる魔法一覧で見ました。
血液に魔力を流して動かす魔法だ。
名前は甘い痛みとかそんな感じの痛い名前だった気がする。
「手は大丈夫?治そうか?」
「また使うかもしれないから大丈夫です。後自分で治せます」
先輩は顔をムッとさせる。
私がポーションを指にかけようとすると手首を掴んで止める。
「ダメ使わないで、本当にピンチな時に使って」
私の手を彼が掴むと同時に淡い光が集まり小さな傷を埋めていく。
「あ、ちょっと!」
「道に異常は?」
「…無いです」
先輩の圧に負けて抗議の声は出てこない。
先輩は手をずっと握って離さない。
「1回休憩入れようか。お腹空いてない?」
「空いています」
私は鞄から携帯食料を出す。
1本は食いすぎかな。
先輩に半分食べてもらおう。
「先輩半分食べてくれませんか」
「ありがとう」
「水分持ってかれちゃうんで気を付けてさい」
ポーションは後で飲もうまだ魔力に余力はあるし。
「ユキナちゃん飲み物は?」
「ポーションです」
「…お茶飲む?」
「大丈夫ですお気持ちだけ」
「良いから飲んで」
2人分のコップを地面に置いてお茶を注いで先輩は私にグイグイと差し出す。
押しに弱いに定評がある私はそれを受け取った。
「先輩って私より女子力ありますよね」
「家庭的で良いでしょ?ユキナちゃん俺と結婚したら楽できるよ」
「私よりも魅力的な人はいくらでもいるのでその人を口説いてください」
爆弾発言を何とか顔色1つ変えることなく流すことに成功した。
ナイス私!
「俺は本気なんだけど?」
「私は先輩にそう言った感情を持っていないので」
「意識してくれないの」
イケメンで性格が良い時点で最高なのにおまけに女子力もある、優良物件とはまさにこのことだが私の中ではただの先輩くらいにしか思えない。
「ただの先輩としか思ってない?」
「…そうですね」
「どうしたら君に意識してもらえる?」
どうしたら良いんだ。こんなセリフなかった。
そもそも一緒にダンジョンに潜るなんて終盤だ。
イレギュラーすぎる。
「意識って言っても私誰かを好きになったこと無いし…」
どんどん不安になってきた。
予想してない展開に漁るんですが。
どう応えたら傷つけない?
恋愛の神様教えてよ。
「グギャアアアアア!」
ナイスタイミングか最悪なタイミングかどちらともとれるタイミングで人ならざる者の声が響く。
「先輩治してもらったのにごめんなさいっ!」
「俺がやる」
私のナイフを持つ手を止める。
そして私からナイフを奪う。
「っ、痛いねこれ」
「馬鹿ですか!痛いに決まってるでしょう!」
私は先輩を睨む。
痛いのに何で私を止めて自分でやるかなこの人は。
「急いで行って!」
先輩の作った鳥は私の鳥よりも力強く羽ばたいて進んで行った。
「…ユキナちゃん足に俊足の強化かけて、俺は自分でかけるから自分に集中して逃げるよ」
「はいっ」
切羽詰まった先輩の声でただ事じゃ無いことは分かる。
「戻ってギルドに報告しないと」
「あの先輩」
「大丈夫。俺が守るから」
先輩は私の手を力強く握る。
その暖かさが私を冷静にさせる。
「先輩強化の二重掛けって耐えられますか」
「何を言って…」
私は深呼吸をして言った。
「私が時間を稼ぎます」
「馬鹿なこと言わないでよ!相手はミノタウロスなんだよ?!」
ミノタウロス…牛かよ。
序盤のダンジョンで出てくるって難易度設定おかしすぎるでしょ。
「多分私たち一緒に逃げたら追い付かれます先輩の鳥帰ってきてないですよね。多分匂い覚えられてるから地の果てまで追いかけてきますよ」
ミノタウロスはこのゲームだと斧をぶん投げるストーカーと言われている。
開発者がミノタウロスが大好きでもう地獄かってくらい強化してきた。
全てのステータスがおかしいモンスター版のナナミくん(物理型)だと例えた方がすごいドンピシャだ。
「でも外に出れば…」
「そう思うじゃないですか追いかけますよあいつは」
30分チェイスをしたから言えるあいつはガチでストーカだもうそれは重度の。
諦めて長時間の戦闘をしたフル強化でレベルカンストしててもギリギリ。
私が死ぬ前に弱体化すると開発が泣きながら言っていたが、今は反映されてるのだろうか?
「倒すしかないんでギルドで大型パーティ組んでください私1人でどれだけ持つか知れことですけどね。合間見て外出ますから」
「それなら俺が残る」
「先輩が行く方が絶対速いですから。馬鹿言わないで行ってください」
「馬鹿な事言ってるのはユキナちゃんじゃないか!」
「大丈夫です」
攻撃パターンは覚えてる。
弱点も覚えてる。
後は私の体次第だ。
「行ってください先輩」
これが1番良い。
貧乏くじを引くのは
「…絶対に死なないでね」
「はい。私の生命力はゴキブリ並みなんで任せてください!」
「信じるよ」
私は先輩の足に強化をかける。
先輩はかけられたのを確認して全速力で走る。
彼がいなくなったタイミングで地響きが鳴り響き化け物が姿を現した。
「牛ごときが、もう1回細切れにしてハンバーグにしてやる」
「アアアアアアアアアア!」
私はナイフを構えてミノタウロスを睨みつけた。
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