イケボでささやくな耳がおかしくなる(定期)

 学園にはしっかり外出届けは出した。

 必要な物はしっかり鞄に入れた。

 予備のナイフ2本に水分(魔力回復用ポーション)、携帯食料(よくある棒状の口に入れると水分持ってかれる奴)が入れてあることを確認する。


 服装はジャージを採用した。

 ダンジョンに潜るのだから汚れるだろうし最悪返り血がつく可能性を考慮した結果である。

 短パンは良いな動きやすくて、それに蹴る時に何がとは言わないが見えないから躊躇なく蹴ることができる。


「にしてもこの学校緩いよな…」


 ダンジョンに行くと言ったら授業受けなくても良いけどダンジョン攻略のレポート出してくれって、それで基礎ができてるか確認するからと先生に言われた。


 ナナミくんも一応先輩とダンジョンに潜ると伝えてある。

 大丈夫後は…。

 忘れ物は無いかと考えていると私の部屋のドアに誰かがノックする。


「はーい。カナちゃんなら教室行ってますよー」

「ナナミ何だけど、セラさんに用事があってきました」


 あ、私に用事ですか。

 ドアを開けると眠たそうな顔をしたナナミくんがいた。


「おはようナナミくん」

「おはよセラさん」

「眠たそうだね、寝ぐせあるよ」

「え?!どこ?」


 私はナナミくんの髪を触って場所を教える。


「ここ」

「あ、ありがとう」


 ナナミくんは顔を赤くしている。

 よほど寝ぐせがあったのが恥ずかしかったのだろう。


「意外。ナナミくんってきっちりしてるから寝ぐせとかもちゃんと直してると思ってた」

「結構だらしないよいつもウキハ…同室の奴に起こしてもらってるし」


 ナナミくんとカゲミくんが仲良くやっていて私は嬉しいよ…。


「へぇー可愛いところもありますなぁ」

「か、可愛い?」

「うん」


 真面目そうな子が見せる少しだけお茶目な部分は萌える、萌えるしかない。

 可愛くないとか思うやつちょっと出てきなさい。私とお話しようか?


「俺、かっこいいの方が…ってこんな話するためにきたんじゃなくて!渡したいものがあって」


 彼はそういって制服のポケットからブレスレットが出てきた。


「きれいだねこれいくらしたの?」

「なんで買ってきた前提なの?手作りだよ」

「おお、いくら払えばいいかな」

「話聞いてた?」

「聞いてますとも」


 こんなきれいなブレスレットに価値がないなんておかしい。

 青い玉と白い玉が交互についているブレスレットはすごく晴れた日の空を連想させるくらいきれいだ。


「これ守護のお守り。ちゃんとこういうの作るの得意な人に聞いて作ってるから大丈夫だと思う。本当にセラさんが死にそうなときに1回だけ起動するから」

「ありがとう!もったいなくてこれ着けれないよ…!」

「着けてね?」


 私はブレスレットをはめる。

 ジャージなのにちょっとワンポイントあると少しは…おしゃれに見えるよね?

 そうだよね?


「壊さないように帰ってくるね」

「絶対に!死にかけだ外そう。とか血迷ったことしないでね」

「…し、シナイヨ?」

「目を見て言ってくれるかな」


 ナナミくんいつの間にか心を読めるようになったのだろうか?

 ガチで一瞬そう考えてたんだけど。


「回復できるしぃ…良いかなと」

「渡した意味がないでしょ?!」

「冗談だよ?半分は」

「半分は外すつもりだったんだね」

「だってもったいないもん!」

「そんなのいくらでも作ってあげるから、ちゃんと帰ってきてね」


 ナナミくんは本当にいい子だと思う。

 ではお言葉に甘えて壊すくらいボロボロになるまで暴れさせてもらおう。


「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 いってらっしゃいと言われるのはいいものだなと思うのは生前から変わらない。

 誰が帰りを待ってくれると思えるから。


 寮の入口前でヒカリバ先輩が立っているのを見て、やばい遅刻した!と走って先輩の元に行く。


「すみません遅れました!」

「ん?集合時間15分前は遅刻じゃないから大丈夫だよ。俺が早いだけだから」

「後輩は早く来て1番遅くに帰るものなんです」

「ブラックだなぁ…遅刻しても連絡くれれば怒らないのに」


 運動部に入ってみろそれが常識になるぞ。

 1分でも遅刻すれば先輩に罵詈雑言を浴びせられるという。

 ここは地獄かと思ったわ。


「先輩がすごく天使に見えます。連絡くれれば許されるんだ⋯ホワイトな環境だー」

「⋯学園の行事での遅刻はちょっと怒るけどね」

「はい!全然大丈夫です私遅刻は絶対にしないので」

「もう少しだけ緩くてもいいのに5分前でも良かったんだよ?」


 5分前は私の中で論外だ。


「ユキナちゃんって本当に真面目だね」

「何ですか急に」

「5分前は論外って言うから」


 またこの人は息するみたいに心読みやがって…。


「心読むのって疲れると思うんですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫。君みたいに素直な子の心を見るのは苦にならないから」


 ええ…私、素直じゃないと思うけど。


「そういうところだよ。顔に出やすいなぁ…」

「見ないでください」


 私は手で顔を隠す。

 先輩は笑いながら私の手をどかそうとしてくる。


「ちょ、何するんですか?!」

「顔が見えないと何思ってるか分からないでしょー?」


 前も思ったけど力が強いんだけどこの人!


「君が非力なだけじゃない?」

「すごく失礼!」

「事実だからね、っと」

「わっ!」


 先輩は私の指の間に自身の指を入れる。

 くすぐったさが来て力が一瞬だけ抜ける。


「離してください!他の人に見られたら貴方の一部の過激派のファンに殺される!いろんな人にも勘違いされる!」

「良いよ勘違いされちゃおうか…そしたら俺から離れないでしょ?」

「い、嫌ですよ私の平穏を奪わないでください」


 私は何とか恥ずかしさを我慢している。

 自分の乙女な部分を抑えている。

 少しだけ心臓がドキドキした気がするけど気のせいだ、きっと過激派に消される恐怖がそうさせただけに決まっている。


「俺のせいでドキドキしてるって言わせたいなぁ」

「ひゅ」


 耳元はやめろよ!

 ちょっとえっちなんだよ変な声出たでしょ恥ずかしいな!


「行こうか」

「手離してくだ「聞こえないなー」


 先輩は私の手をあろうことか指を絡める繋ぎ方…いわゆる恋人繋ぎをして歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る