先輩が私の心の声聞いて会話成立させるんだが?

「はい足出してー」

「自分で治します!」

「自分で治せないのは知ってるから嘘つかない方が良いよ?」


 私は図星を突かれて黙り込む。

 私の回復魔法の欠点は自身の治癒ができないのだ。

 理由は知らないが。


 この攻防はいつまで続くのだろうか?

 私は必死に抵抗して足をジタバタさせる。


「ほら怪我悪化しちゃうから動かないでよ」

「先輩が離れてくれたらしますよ」

「んーやだ」


 ハートが語尾に付きそうな言い方をして先輩は私の足を簡単に掴む。

 どれだけ暴れてもびくともしない。強すぎないか?


「先輩、私自分で治せるんで魔力の無駄になるので大丈夫ですから。話聞いてますか?!」

「自身のことを大切にできない後輩の言葉は聞きませーん」


 自分を最優先に考えて行動してるのに大切にしてないと言われても困る。

 私と相手を天秤にかけてどれが最善の選択か考えて、結局自分より相手の方がいる方が良いと思うからそうしてるだけ。


「…呆れた。君って結構自己犠牲する人?」

「違います。私はこれが最善だって思うから行動するんです」

「それで結局毎回相手を選ぶんでしょ」


 先輩の私の足を握っている手の力が強くなって私は痛みで顔をしかめる。


「ち、違います!これが最善だからって…「だからって自分を後回しにする?」


 先輩の声はいつものような明るさが無い。

 怖い…知らない人みたい。


「授業でカエデと組んでやってたの見たよ。教室の窓からだけど、君ってもしかしてあんまり人信用できない人?」

「ち、ちが…」


 部分的には正解だ。

 私は誰かのルートに入るのが嫌でなるべく接触を避けるために連携をしているフリをする。

 戦闘で親密度が上がるケースがあるから、ナナミくんがそれに当てはまるから。


「違いません」


 私は否定しようとも思ったが、あきらめる。

 相手は心が読める分が悪い。


「あっさり認めるんだ」

「ヒカリバ先輩は心が読めるのに嘘ついてもどうしようもないじゃないですか」

「それもそうか」


 最悪。何でこんなことになるんだろう。


「決めた。ユキナちゃん君はしばらく俺と行動してもらいます」

「はぁ?!な、なに言って仕事は?」

「業務はいつも通りにやってもらうけど、仕事の時同席してもらうだけ秘書さんみたいな感じで。もちろん都合の良い日で構わない」

「…私が全部無理ですって言ったらどうするつもりですか」


 ヒカリバ先輩ならどう返事するか、予想がつくはずなのに思考がまとまらない私はなぜかそう言ってしまった。


「君は責任感が強いから途中で投げ出したりする子じゃないのは分かってるよ」

「…」


 信用しすぎでは?

 ガチで幸せになれるとか言われて高い壺とか信じて買いそう。


「流石にそれは無いかな」

「私の心の声で会話成立させるのやめてくれませんかね?!」

「君が全然本音で会話してくれないからでしょ」

「本音でしか話してませんよ」

「嘘!初めて会ったときすごい嫌そうな顔してたじゃん!」

「休みたいのにあんたが来るからでしょうが!…あ、ごめんなさい」


 ヒカリバ先輩は嬉しそうに私を見ている。

 暴言吐かれてニッコニコなのはもうドMなのでは?


「ドМじゃないね俺どっちかと言えばSかな?」

「知りませんよ!知りたくありませんよそんなこと!…何で私が暴言吐いて笑ってるんですか」

「やっと君が少しだけ分かった気がして」

「そんなことで喜べるのは先輩くらいですよ」


 私は呆れてもう言葉を発するのが面倒くさくなってきた。


「…あの、足治して良いですか?」

「俺がやるから良いよ」


 私は抵抗しようにも足が動かない。

 力強いんだけど。

 ねぇこの人可愛い顔してどんだけ力つよ…ああ、ヒロイン非力だったわ。


「ええい!治すなら一思いにやってください!」

「そんな殺すならひと思い的なノリで言わないでくれる…?」

「私にとってはそれくらいのことなんです」

「ユキナちゃんって面白いよね」


 何気なく失礼なこと言うんですけど、私すごく真剣なんですけど?そう抗議しようにも気力はもうない。

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